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社会人タイトルを総なめの大阪ガス右腕・河野佳。プロ解禁22年へ「行くからにはドラフト1位で指名を受けたい」

 

2年目の21年に大ブレーク


大阪ガス・河野佳は2021年社会人野球表彰でベストナイン[投手部門]、最多勝利投手賞、最優秀防御率賞を受賞した


 河野佳は2019年、広陵高3年春のセンバツで150キロを計測。甲子園大会後には高校日本代表候補として、研修合宿に参加した。同合宿では大船渡高・佐々木朗希(ロッテ)が実戦形式の練習で、高校生史上最速の163キロをマーク。多くの同級生が高卒でプロ入りした。

 21年はロッテ・佐々木をはじめ、オリックス宮城大弥(興南高)、ヤクルト奥川恭伸(星稜高)、阪神及川雅貴(横浜高)など、高卒2年目選手が飛躍するシーズンとなった。

「テレビで活躍している姿を見ていると、悔しかった……。早く、あそこで活躍したい」

 河野はプロ志望届を提出していれば、ドラフト指名は間違いないと言われていた。しかし、同書類の提出を見送った。それは、なぜか。

「(広陵高の)中井先生(哲之監督)と相談しまして、仮に下位指名でプロ入りよりも、社会人を経由してドラフト1位を目指したほうが良い、と。当時の大阪ガス・橋口(博一)監督からも『一緒に、やらないか?』と」

 大学ではなく、社会人を志望したのは「早く、プロに行きたい。4年も時間はない。母親に恩返ししたい」との思いが強かったからだ。

 河野は入社1年目から都市対抗のマウンドを経験(救援)すると、2年目の21年は大ブレーク。7月の社会人日本選手権では5試合中4試合に登板して、19イニング無失点(2完封、救援2試合)で2大会連続優勝に貢献し、MVPを受賞した。伏木海陸運送との都市対抗1回戦でもシャットアウト。公式戦7試合で6勝(無敗)、43イニングで1失点の防御率0.21と圧倒的な数字を残した。

 社会人表彰でベストナイン、最多勝利投手賞、最優秀防御率賞と投手のタイトルを総なめに。12月22日の表彰式で、河野は「社会人2大大会を無失点(28イニング)で投げ抜いたのは自信になる。22年は研究されると思いますが、今のスタイルを変えることなく、点を取られない投手になりたい」と意気込んだ。とはいえ、背伸びはしない。

「好投手というのは、飛び抜けたものがあるものですが、自分にはそういうのがない。全体的なものを『〇』に近づけていきたいです」

高まったゲームメーク能力


 最速151キロにカーブ、スライダー、カットボール、フォークと持ち球を駆使し、丁寧にコーナーに集める。43イニングで、わずか四死球7。河野は失点をせず、負けない投手であり、決して自分から崩れない投手なのだ。

 高校時代は場面によって一喜一憂することもあったが、社会人でマウンドにおける立ち居振る舞いを学び、落ち着いて投げられるようになった。こうした心の安定により、好不調の波がなくなり、悪いなりに抑えるという、ゲームメーク能力を高めたのだった。

 さて、22年は高卒3年目のプロ解禁である。

「何位でも良いですが(苦笑)、行くからにはドラフト1位で指名を受けたい。22年が勝負。21年の結果に満足することなく、レベルアップして、また、活躍できればいいです」

 8月の誕生日で20歳になった。淡々と語る河野の口調からは、すでに風格が漂っていた。

文=岡本朋祐 写真=榎本郁也
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