「ワカの分も獲れればうれしいです」
シーズン最終戦前に発した言葉は、まさに源田壮亮らしかった。それまで24盗塁をマークし、
和田康士朗(
ロッテ)と1位タイ。だが、本来なら5月下旬にケガで長期離脱するまで20個と驚異的なペースで盗塁を積み重ねていた
若林楽人がタイトルを獲得しているはずだった。後輩を思いやる言葉が自然と出てくるのは、常に周囲に気を配っているからだ。
今季、キャプテン2年目。昨季、その肩書きがついた際には、かつての主将・
栗山巧が「やっとキャプテンらしいキャプテンが誕生した」と笑顔を浮かべていたが、誰とでもフランクに接し、真面目な人柄はチームをまとめるにはうってつけの存在だった。今季も開幕前に「僕は圧倒的な数字を残せる選手ではないですから。みんなの力を借りて、勝ちたいです」と“チームの和”を強調していた。だが、投打がかみ合わずチームは下位に低迷。自身も5月末に新型コロナウイルスに感染、20日間離脱するなど苦しい日々を過ごした。しかし、苦境に立っても常に全力プレーを心掛け、チームを鼓舞する姿勢を貫く源田の姿があった。
東京五輪では日本代表に選ばれ、金メダルを獲得。盗塁王は最後、
荻野貴司(ロッテ)、
西川遥輝(
日本ハム)にも並ばれ、史上初の4人が並ぶ形となったが初めて栄冠を手にした。さまざまな“ご褒美”があったのは、野球の神様も源田の人間性を認めているからだろう。
写真=BBM