週刊ベースボールONLINE

背番号物語

【背番号物語】巨人・中畑清&大洋・遠藤一彦「#24」福島からプロ野球へ。80年代の「24」は名選手の群雄割拠!?

 

大野や秋山、平野らもいた80年代


入団から引退するまで背番号「24」を背負い続けた中畑


 1日は24時間。ほかにも二十四節気など暦と縁が深いこともあり、なにかと日常生活で見かけるのが「24」という数字だ。「0」や「00」は別次元のものとして、数字が若いほど好まれる傾向のあるプロ野球の背番号では、「24」は1ケタの背番号に比べればインパクトが弱く、投手ナンバーの筆頭格といえる「11」やエースナンバーとされる「18」ほどドラマチックではない。ただ、「24」は投打を問わず名選手が並びやすい背番号という見方もできるだろう。特に1980年代の「24」は、名選手の群雄割拠だった。

 多くの場合、偶然が重なることで背番号の系譜に物語が紡がれる。背番号の物語に偶然は不可欠な要素だ。ほぼ同じ時期に、いくつかのチームで「24」に名選手が並んだのも、偶然が呼び込んだ奇跡なのかもしれない。巨人には中畑清がいた。“絶好調男”の異名もあった好打のナイスガイだ。投手では大洋(現在のDeNA)に右腕の遠藤一彦。左腕では広島大野豊がいた。一方のパ・リーグでは、黄金期の西武で主砲の秋山幸二から名バイプレーヤーの平野謙がリレー。このうち誰か1人を80年代を象徴する「24」に決めるのは難しい。大野は90年代の鉄腕ぶりもインパクトが強く、秋山は2チームで背負った「1」、平野は古巣の中日での「3」と、1ケタの背番号でも印象を残す。この連載でも西武と広島の「24」は紹介した。

 一方、中畑はキャリアを通して一貫して「24」を背負い続けた。遠藤はプロ2年目からだが、「38」だった1年目は11試合の登板にとどまっており、ブレークは「24」を背負ってから。中畑と遠藤、ともに福島県の出身でもある。同郷の両雄が互いを目の敵にするように(?)名勝負を繰り広げた……となれば物語は単純明快なのだが、そこまで背番号の偶然は親切ではない。80年代は巨人戦テレビ中継の黄金期。巨人戦であれば130試合すべてをテレビで観戦できた時代にあって、まさに“球界の盟主”といえた当時の巨人で圧倒的な人気を博した中畑の一方で、遠藤は低迷する大洋をエースとして支え、巨人のド真ん中にいた同学年で“同郷”のスターに牙をむいた。

【中畑清】背番号の変遷
#24(巨人1976〜89)

【遠藤一彦】背番号の変遷
#38(大洋1978)
#24(大洋1979〜92)

運命の79年


低迷していた大洋で「24」を着け、エースとして奮闘した遠藤


 中畑と遠藤は2学年の差。ともに大学を経由してのプロ入りで、プロでも中畑が先輩、「24」でも1年目から背負った中畑が先輩となる。遠藤は大洋が横浜へ移転して、横浜大洋を名乗ったタイミングでのプロ入り。ブレークは前述のとおり「24」となった79年で、これは中畑のブレークとも重なる。中畑は初めて出場100試合を突破、遠藤は初の2ケタ12勝もリーグ最多の12敗。この79年は、遠藤と同じ福島県に生まれた江川卓がキャリアをスタートさせたシーズンでもあった。

 高校時代からスターだった江川を強く意識していたという遠藤。大学でも投げ合って敗れたことがあり、偶然は両者を同じセ・リーグへと導いていく。江川は80年から2年連続で最多勝。遠藤は82年から先発に回り、初めて江川に投げ勝って自信を深める。翌83年からは遠藤が2年連続で最多勝。大洋の低迷は遠藤には逆境といえたが、そんなチームを不動のエースとして支え続ける。巨人の打者に対しては中畑よりもクロマティとの丁々発止が話題になったが、6年連続2ケタ勝利となった87年シーズン終盤にアキレス腱を断裂したのも巨人戦だった。懸命のリハビリを経て戦列に復帰した遠藤は救援に回った90年に復活、そして横浜大洋ホエールズから横浜ベイスターズとなることになった92年オフに引退。横浜大洋とともに歩んだ現役生活だった。

 明るいキャラクターもあって逆境のイメージは希薄だが、中畑も順風満帆ではない。あこがれの長嶋茂雄と同じ“四番・サード”に座った矢先の81年、原辰徳の入団と自身の故障で一塁へ回り、翌82年から意地の8年連続ダイヤモンド・グラブ(86年から名称は現在のゴールデン・グラブに)。89年に三塁へ復帰も故障が続き、引退を決断した。それでも近鉄との日本シリーズに出場すると、3連敗3連勝で迎えた第7戦(藤井寺)に代打で登場して豪快アーチ。頂上決戦での“引退試合”で日本一に貢献してみせた。

文=犬企画マンホール 写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング