振り返ったときに、浮かび上がるトピックスの数々。酸いも甘いもかみ分けて、エース・千賀滉大にとっての2021年は「本当に激しかった。なかなか、ここまで激しいシーズンを送れる人はいない」。まさに激動と呼ぶにふさわしい。
両ふくらはぎのコンディション不良で開幕に出遅れ、迎えた昨季初登板の4月6日の
日本ハム戦(札幌ドーム)で悪夢が襲う。ピッチャー返しを捕球した際に左足首を負傷。じん帯を損傷し、長期離脱を余儀なくされ、前半戦どころか東京五輪も……という中、懸命なリハビリで光が。順調な回復ぶりに、追加招集が決定。万全とはいえない状態に周囲からは心配の声は消えなかったが、いざ東京五輪が開幕すると、中継ぎとして2度の“アメリカ斬り”で金メダルに貢献。8月2日のノックアウトステージ初戦では2回を5奪三振無失点と“復活投”を見せた。
そして、“日本のために”の次は“チームのために”だ。「僕が投げるときは、絶対に負けてはいけない」。リーグ再開からいつも以上に気迫みなぎる投球で、後半戦は11試合に登板して9勝2敗。シーズン最終戦の10月25日の
ロッテ戦(ZOZOマリン)で今季10勝目を挙げ、6年連続2ケタ勝利にも到達。福岡移転後ではチーム初の快挙となった。
ただ、輝かしい結果も、1年を通じて投げられてこそ、満足いくものとなる。右腕は2022年こそ、最初から最後まで投げ抜く覚悟だ。
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