開幕6連敗、4月には悪夢の10連敗。先発する投手がことごとく早い回で失点を許し、序盤で試合が決まってしまう……。そんな投手陣に歯がゆさを感じながらも、ファームで過ごす今永昇太は焦ることはなかった。
2020年10月に左肩クリーニング手術を受けて、昨年の春季キャンプはファームからスタート。3月に実戦復帰を果たすと、着実にイースタン・リーグでの登板を重ねて、満を持して5月23日の
ヤクルト戦(神宮)で一軍復帰登板を果たした。復帰戦こそ4回途中6失点で黒星を喫したが、以後、先発ローテに加わり、崩れかけていた先発投手を支えた。6月13日の
日本ハム戦(札幌ドーム)では7回1失点の好投で、昨年の8月以来となる309日ぶりの白星を手にし、復活を印象づけた。
お立ち台では、リハビリ中、登板がない日でも自分のタオルを掲げる球場のファンの姿に感謝を伝え、「ここに帰ってきて絶対に恩返ししなければならない。そう思うとつらいリハビリもつらく思わなくなった。とにかく試合をつくって、チームが勝つチャンスをつくる」と力を込めた。
後半戦はまさに獅子奮迅の働き。打線の援護はなく勝ち星は伸びなかったが、8試合連続でQSをクリアするなど好投。とくに9月は4試合に先発して防御率1.50と圧倒した。19試合5勝5敗、防御率3.08のシーズン成績は、決して納得できる数字ではないが、今季の飛躍に手応えを感じさせるエースの姿だった。
写真=BBM