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「先発完投できる投手をつくる」50年ぶり3連覇を狙う慶大で注目が集まる中根慎一郎助監督の手腕

 

現役時代は好左腕として活躍


慶大・中根慎一郎助監督は昨年12月1日に就任。現役時代は左腕投手として活躍した


 昨年、東京六大学リーグ戦で30年ぶりの春秋連覇を遂げた慶大に、新たな指導陣が就任した。2019年から助監督を務めた竹内大助助監督が昨年12月31日付で退任し、12月1日からは中根慎一郎助監督(37歳)が指導スタッフに加わった。

「昨年12月の1カ月間は竹内前助監督からの引き継ぎ。全体の流れ、学生たちの名前を覚えるのにも必死でした。1月からは気持ちを新たに、本格的にスタートを切りました」

 中京大中京高(愛知)では1年夏から控え投手としてベンチ入りし、2年秋からは左腕エースとして名門校を支えた。右腕・深町亮介(元巨人)とともに2001年秋の東海大会を制し、明治神宮大会では4強進出。同年12月の日台親善高校野球の高校日本代表としてプレーした。02年春のセンバツには当時、二塁手で主将・嶋基宏(現ヤクルト)とともに、甲子園の土を踏んだ。センバツは西村健太朗(元巨人)−白濱裕太(現広島)のバッテリーを擁す広陵高(広島)に初戦敗退している。

 慶大では1年秋からリーグ戦に登板。神宮初マウンドは早大2回戦の先発を任され、4回2失点だった(敗戦投手)。「鳥谷(敬、元阪神ほか)さん、青木(宣親、現ヤクルト)さんら、一番から六番まで、のちに野手6人がプロ入りした打線と対戦できたのは、貴重な経験になりました」。

 2年秋にはリーグ優勝を経験。3年春は先発、抑えに活躍し3勝を挙げ、防御率0.59の好成績を残した。大学4年間で19試合、4勝2敗、防御率2.22と貴重な左腕として躍動し、卒業後は社会人・三菱重工名古屋へ進んだ。

 入社1年目の日本選手権準優勝に貢献し、優秀選手賞を受賞。8年間プレーし、現役引退後は約7年、社業に就いた。「引退のタイミングとそのあとに2回、野球部からコーチ就任の要請があったんですが、社会人としてサラリーマン経験を積みたい、とお断りをしていたんです。いずれ野球の現場に戻ったときにプラスになると、仕事に集中していました」。

 三菱重工は広島、神戸・高砂、名古屋、横浜にあった野球部を東・西の各1チームに再編・統合。三菱重工名古屋は2020年限りでその歴史に幕を閉じ、21年から三菱重工East(横浜市)、三菱重工West(神戸市・高砂市)として新たなスタートを切った。

「いずれは野球部に恩返ししたいと思っていましたが……。途絶えてしまい……。そんな矢先、会社を通じて慶應から助監督のお話をいただきました。本当にありがたい機会です。後悔をしないように、と思いました」

「大きな力。期待しています」


 水面下で慶大助監督の打診を受けたのは約1年前。昨年1年間は、動画配信などでリーグ戦をチェックしてきたという。「私の現役時代と比べても、一人ひとりが考えながらプレーしているのを感じました。実際、12月に現場指導に入ってみると、各々が役割を理解して動いていました」と、30年ぶりに遂げたリーグ戦春秋連覇の土壌を肌で知ったという。

 前任の竹内助監督と同様、投手指導を中心に担当する。

「勝つことが目標、目的であるので、勝てる投手陣を育てていきたいと思います。昨年、春は1完投、秋は完投ゼロ。先発完投できるピッチャーをつくっていきたいです」

 就任3年目の堀井哲也監督は、中根助監督の過去の実績において、全幅の信頼を寄せており「大きな力。期待しています」と語った。

 今春、慶大は1971年秋から72年秋にかけて達成して以来、50年ぶりの3連覇がかかる。エース右腕・森田晃介(JFE東日本)は抜けたが、2連覇に貢献した増居翔太(4年・彦根東高)、生井惇己(4年・慶應義塾高)、渡部淳一(4年・慶應義塾高)の左腕3人に、昨年は試合を締めるストッパーを務めた150キロ右腕・橋本達弥(4年・長田高)がそのまま残る。経験豊富な投手陣をどのように機能させて、さらには新戦力を育成していくのか。中根助監督の手腕に注目が集まる。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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