4年前に創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。バックナンバーを抜粋し、紹介する連載を時々掲載しています。 後期優勝は早くも絶望的に
今回は『1973年9月24日号』。定価は100円。
「後期こそ優勝やで!」
前期、旋風を巻き起こしつつも2位に終わったロッテの金田正一監督。しかし、その後期、一度は首位に立ったのだが、
西本幸雄監督率いる阪急がとにかく負けない。
9月5日の近鉄戦(日生)に敗れ、この時点で13連勝していた阪急に8.5ゲーム差とされた。
それでも試合前のカネやんは元気だった。話題はパではなく、
王貞治の活躍で団子レースから抜け出した
巨人の話。
「ワシがセの監督やったら王封じはばっちりやるんだがな。秘訣は王が上げた右足を狙って投げるんだ。そうすると体を開いてしまうか、上げる足を気にし過ぎて微妙にタイミングが狂ってくるもんや」 と上機嫌で話していた。しかしここで記者から、「ワンちゃん封じはよく分かったけど、阪急封じ作戦も教えてくださいよ」と言われると、途端に顔色が変わった。
「大体、阪急みたいな人気のないチームに独走させたらパ・リーグの灯が消えるで。絶対阪急独走を許したらあかんで」
これをあとで聞いた西本監督もさすがにカチンときたようで、「団子レースが面白いとカネは言ってるようだが、レベルの低い団子レースのどこが面白いんや」と憮然とした様子で言っていた。
この日の試合は
ラフィーバーの2ランでロッテが先制しながら先発の
鬼頭洋が早々にKOされ、9回には代走の
吉岡悟がウエスト球でセカンドから飛び出してしまい、捕手・
梨田昌崇の強肩に刺されてしまうなど、散々の結果となった。
試合後の金田監督は顔を真っ赤にし怒りを爆発させる。ベンチで高見沢マネジャーをつかまえ、「おい、すぐ切符を二枚買って吉岡と鬼頭のバカを東京へ帰してしまえ。あんなバカな奴らはもういらん。来年はトレードや! やっとワシはバカな選手と利口な選手が分かった。ワシはシーズンが終わったらバカな選手とコーチはどんどん出してしまうで!」
実際、鬼頭はこの年限り、吉岡は75年に放出されている。
では、また。
<次回に続く>
写真=BBM