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背番号物語

【背番号物語】ソフトバンク「#1」秋山幸二がもたらした“黄金の系譜”はドライチ右腕の背で新章に突入?

 

初代はゲーム4本塁打の第1号


西武からダイエーに移籍しても背番号「1」を着けた秋山


 一部の例外(?)はあるものの、もっとも小さい背番号である「1」。一般的には“チームの顔”といえる選手が背負う傾向が強いが、南海からダイエー、そしてソフトバンクの「1」は独特の変遷を見せてきた。大きなエポックはチームが南海からダイエーとなり、大阪から九州は福岡へと移転して6年目の1994年。西武から移籍してきた秋山幸二が古巣と同じ「1」を背負ったときだろう。

 以前、秋山を紹介した際にも触れているが、秋山の「1」は黄金時代の西武で「“ON”のようなクリーンアップを作りたい」ということで与えられたものだ。“ON”とは巨人のV9を象徴する王貞治長嶋茂雄のクリーンアップで、王の背番号こそ「1」だった。奇しくも秋山の移籍2年目の95年、その王が監督に就任。99年には九州で初のリーグ優勝、日本一を果たして、その勢いのままダイエーは黄金期に突入していく。チームがソフトバンクとなり、王監督が勇退すると、監督の座を継承したのは秋山。V9巨人から西武を経てダイエー、そしてソフトバンクへ。王と秋山、それぞれの「1」が紡いだ“黄金の系譜”の物語といえそうだ。

 2002年いっぱいで秋山が現役を引退すると、「1」は1年の欠番を挟んで秋山と同じ外野手で「31」柴原洋が後継者となり、11年オフに柴原が現役を引退すると、その11年にFAで来て「24」を着けていた内川聖一が継承。ちなみに「24」は秋山が西武で「1」の前に着けていた背番号でもある。20年オフに内川がヤクルトへ移籍すると、翌21年は欠番も、その秋のドラフト1位で入団した右腕の風間球打が後継者に。風間の背中で物語の新章が始まるのかもしれない。

新たにホークスの「1」を着けたのはドライチ右腕・風間だ


 投手、それも新人が背負うのは異例のことには違いないが、系譜を初代までさかのぼっていくと、まるでプロ野球の歴史を凝縮したかのような、多彩な顔ぶれが並んでいる。南海がプロ野球に参加したのは、まだ2シーズン制だった1938年の秋季。このときの「1」は主将の背番号だった。用具も粗悪だった時代に、“神主打法”から長打を連発した岩本義行。南海では2度の応召で長くプレーできなかったが、のちにプロ野球で初めてゲーム4本塁打を放ったパワーヒッターだった。

名将、助っ人、職人肌……


南海でも「1」を着けてプレーした古葉


 秋山も21世紀に監督として結果を残しているが、名将の“出世ナンバー”という面もある。戦後、プロ野球が再開した46年に「1」の2代目となったのが兼任監督の山本(鶴岡)一人。1年で当時の監督ナンバーだった「30」に転じたが、46年が監督1年目で、2リーグ制となって南海に黄金時代を築いた名将だ。率いたのは南海ではないが、広島に黄金時代を築いた古葉竹識が現役の最後に背負ったのも南海の「1」。古葉は広島でも「1」でプレーしていた内野手だった。古葉の前任はブレイザーだ。いわゆる“シンキング・ベースボール”で、のちに兼任監督となる野村克也に大きな影響を与えた助っ人だった。ブレイザーの前後にはピートやドイルら助っ人も系譜に並んでいる。

 ただ、ブレイザーと古葉のリレーで始まった実力派の内野手が南海の「1」に独特の彩りを与えている。南海の最後、ダイエーの最初に「1」だったのは小川史で、秋山よりも前に西武から来た内野手。移籍3年目の1985年に遊撃のレギュラーとなって、翌86年から「1」、秋山の加入で94年から「31」となり、96年までプレーしている。ちなみに、翌97年に「31」の後継者となったのが柴原だ。

 ドイルの前に83年の1年だけ「1」だった内野手の立石充男は翌84年に「0」の初代に。立石の前に「1」だったのは桜井輝秀。ブレイザーの愛弟子といえる内野手で、72年に「37」から「1」となり、背番号とともに二塁の定位置でもブレイザーの後継者に。攻守走の職人技は白眉で、絶妙なエンドランなど勝負強さを秘めたチーム打席やファインプレーをファインプレーに見せない二塁守備など、プロ野球の「1」としても独特な存在。背負った期間は秋山や内川も届かない11年で、10年を超えているのも唯一だ。

【ソフトバンク】主な背番号1の選手
岩本義行(1938、40〜41)
ブレイザー(1967〜69)
桜井輝秀(1972〜82)
秋山幸二(1994〜2002)
柴原洋(2004〜11)
内川聖一(2012〜20)
風間球打(2022〜)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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