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新1年生・吉田瑞樹、伊藤樹、小澤周平が抱く「早大」への並々ならぬ思い

 

先輩の逆転2ランを見て


早大のアスリート選抜入試で合格した3選手が2月5日、全体練習に初めて合流した[左から浦和学院高・吉田瑞樹捕手、仙台育英高・伊藤樹投手、健大高崎高・小澤周平内野手。写真提供=早稲田大学野球部]


 東京六大学リーグは各校の戦力が拮抗している。どこが優勝してもおかしくない。勝負運を引き寄せる意味で、最終的な「差」として出るのは、大学への「愛着」と言える。いかにチームの勝利のため、多くの部員が白球に集中できるか。その浸透力で明暗が分かれる。

「WASEDA」への思い。頼もしい新1年生が2月5日、早大での初練習に参加した。アスリート選抜入試で合格した3選手には、それぞれ「エンジ」への相当な情熱がある。

 強打捕手・吉田瑞樹(浦和学院高)は小学校時代から、自宅で「将来の夢」を語り合う機会があり、早稲田の話題が出ていた。以来、甲子園と神宮でのプレーを目指してきた。

「地元の埼玉で、甲子園に一番近いところ。そして、早稲田に行ける可能性がある高校として、浦和学院高を志望しました」

 同校から早大へ進学したのは2015年から18年までプレーした小島和哉(現ロッテ)、そして3学年上には、2022年のドラフト候補である左のスラッガー・蛭間拓哉が在籍している。

 吉田は3年夏、四番・捕手として3年ぶりの甲子園出場へ導き、早大への道も拓けた。

 理想の司令塔として「チームを勝たせられる捕手」を目指している吉田。野村克也氏、古田敦也氏の著書を読み込んで、キャッチャーとしての配球面、スキルを磨いているという。

 吉田には、印象に残る早慶戦がある。2020年秋、慶大2回戦で1点を追う9回二死一塁から逆転2ランを放った先輩・蛭間の本塁打だ。

「蛭間さんは浦学時代から、勝負強く、逆境を跳ね返す力がありました。動画でも見たことがあり、ああなりたいと思っていました」

好きな言葉は「一球入魂」


 10季ぶり46度目のリーグ優勝を決める劇的な一発に、胸を躍らせたのは吉田だけではない。今春から早大の一員となる小澤周平(健大高崎高)も、その一人。当時、高校2年生。健大高崎高が同秋の関東大会を2年連続で制した、ちょうど1週間後だった。

「たまたま、先輩がスマホでネット中継を見ていて、その横にいたんです。センターバックスクリーンへの2ラン。蛭間さんは涙を流しながら、ベース1周をしている。自分もここ一番のチャンスで打って、人を感動させたい。早稲田でプレーしたいと思いました」

 健大高崎高の四番・主将として3年春のセンバツ出場。好きな言葉は「一球入魂」。小澤は早大の初代監督である飛田穂洲氏の言葉を胸に秘め、早稲田を強く志望してきた。強打の左打者として、高校通算52本塁打をマークも、木製バットとなる大学では「1本でも多く、ヒットを積み重ねていきたい」と語り、首位打者奪取を目標に掲げた。本職は二塁手だが、出場機会があれば三塁、一塁にも挑戦していきたいと意気込んでいる。

勝ち続ける投手に


 149キロ右腕・伊藤樹(仙台育英高)は19年1月1日から母校・早大を率いる小宮山悟監督(元ロッテほか)に心酔している。

「(高卒の段階で)プロに行けるのか、行けないのかを考えた際に、大学4年間で経験を積んだほうが良いのではないかと思いました。小宮山監督はプロの第一線で長く活躍された方。現役時代、シェイクを投げていましたが、遅いボールでも抑えていた。球数を少なく、打者を見て投げる投球術を学んでいきたい」

 現役投手では、NPB屈指の理論派と言われる日本ハム金子千尋も尊敬しており「自分をよく知った上で、ピッチングすることが大事です。真っすぐが速いだけでは勝てない」と、変化球の精度にもこだわりを見せている。まずはストレートの質を追い求めながらも、最も自信のあるスプリットを軸にカーブ、スライダー、チェンジアップ、シンカーらを状況に応じて勝負球にしていくのが理想だという。「1年から投げるチャンスはある。4年間で、勝ち続ける投手になりたい」と目を輝かせる。

 早稲田大学野球部は1901年創部。明治、大正、昭和、平成、令和と歴史を積み重ねてきた。新1年生は早稲田への並々ならぬ思いと、伝統ある組織に身を置いている自覚と責任を胸に日々、研鑽を重ねていく。

文=岡本朋祐
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