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プロ野球はみだし録

“引退宣言”も絶好調の助っ人。サイクル安打を決めて「笑いが止まらなくなりそうで……」【プロ野球はみだし録】

 

「やるだけのことはやった」


引退を宣言しながらも猛打が爆発した1999年のローズ


 余力を残して惜しまれながら引退するのも、ボロボロになるまで続けるのも、それぞれの美学だろう。完璧主義者ゆえに前者の道を選んだことで、“引退宣言”につながった助っ人がいた。横浜(現在のDeNA)のロバート・ローズ。1998年にチームを38年ぶりリーグ優勝、日本一に導いた“マシンガン打線”の四番打者で、権藤博監督をして「打線の顔はローズ」と言わしめた好打者だ。翌99年は開幕から絶好調だったローズだが、「やるだけのことはやった。シーズン限りで引退して家族とゆっくりしたい」と、“引退宣言”が飛び出したのは、その6月のことだった。

 ローズは93年に入団。抜群の安定感を誇る中距離ヒッターで、1年目から打点王に輝くなど勝負強さも光った。ただ、不満があったのは“助っ人”という立場だ。「ボクらは結果を出さなければクビ、出しても当たり前と言われる。ボクは他人にクビと言われたくない。いいときに自分の判断でやめたい」というのが、来日7年目の“引退宣言”につながったという。

 だが、ゴールを設定したことで集中力がアップしたのか、余力を残すどころか、ますます調子を上げていった。30日には自身3度目のサイクル安打。3度の達成はプロ野球で初めてのことだ。「サイクルはホームランで決まる場面だった。ふだんは考えないが、あの打席ではホームランを狙ったよ」とローズ。狙いどおり左中間への本塁打を放ち、いつもどおり黙々と塁を回ったが、「ホントは笑いが止まらなくなりそうで、ガマンするのが大変だった」のだとか。

 この試合を終了した時点で打率.382、すでに71打点となっていた。その後も勢いは止まることなく、7月22日にはゲーム10打点、球宴でも6打点の荒稼ぎでMVPに。最終的には自己最多、リーグ最多の192安打を放ち、それまで22本塁打が最多だったのが、37本塁打と長打力も爆発。153打点、打率.369で打点王、首位打者の打撃2冠に輝いている。夫人の希望もあって、その翌2000年もプレーを続行。99年ほどの爆発こそなかったものの、リーグ最多の168安打、リーグ2位の打率.332を残し、ファンに惜しまれながら退団している。

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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