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プロ野球はみだし録

「清原さんがいたから5キロは球速が上がった」伊良部秀輝だが…“幻の160キロ”投じた打者は【プロ野球はみだし録】

 

「次の回、狙ってやろうと」


球界を代表する強打者・清原に剛球で立ち向かった伊良部


 投手と打者が力の限り激突する、三振か本塁打かの名勝負。打って爽快、打ち取って痛快といった対決は1990年代のプロ野球、中でもパ・リーグを大いに盛り上げた。いわゆる“平成の名勝負”だ。打者は西武清原和博が主役。対するは近鉄で1年目から旋風を巻き起こした野茂英雄、その野茂がドジャースへ移籍する前後はロッテ伊良部秀輝だった。

 西武は黄金時代のド真ん中。Aクラスが多かった近鉄の一方で、成績も人気も低迷、本拠地も川崎から千葉へ移転と試行錯誤していたロッテの剛腕が、常勝チームの主砲を力でねじふせる姿は、なんとも魅力的だった。もちろん、清原も負けてはいない。圧倒的な清原の存在が伊良部を挑発し、伊良部の剛球が清原を扇動した。「清原さんに乗せられて投げているだけなんです(笑)」と振り返っている伊良部は、「清原さんがいたから5キロは球速が上がった」とも語る。実際、当時の最速158キロを出したのも西武戦だった。

 1993年5月3日、西武球場。伊良部が清原へ投じた1球が158キロを計測し、伊良部も「こんなに出ていたの?」と驚いたと言うが、これを清原はバットに当ててファウルに。これで「乗せられた」伊良部は2球連続で157キロを投じるも、最後は清原に右中間へと打ち返されて二塁打に。このときは結果的に三振でも本塁打でもなかったが、これで「速いだけの球は打たれる」ことを伊良部は学んだという。ただ、その後も伊良部は「いつか(前人未到の)160キロで清原さんを三振に取りたい」と剛速球を投げ続けた。

 だが、この5月3日の試合で、「すぐ手の届きそうなところに来ていましたから、その数字を出したくない、といったらウソになる」と、伊良部は打者が清原ではなくても、まだプロ野球で誰も投げたことがなかった160キロを狙っていたのだとか。「(158キロの)次の回、狙ってやろうと思ったんです。ボールになってしまった1球、スコアボードにスピード表示は出なかったんですが、160キロを超えてましたね。確実ですよ」と伊良部は胸を張る。ちなみに、この“幻の160キロ”のときの打者は捕手の伊東勤だった。

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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