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【MLB】ビッグ・パピが史上58人目の1年目殿堂選出

 

ツインズ時代のオルティス。この時期の苦労や悔しさがあったからこそ、レッドソックスでの大活躍につながり、殿堂入りを果たした。本人もツインズへ感謝のコメントを出した


 ビッグ・パピの愛称で知られるデビッド・オルティスが野球殿堂入りを果たした。資格を得て1年目に選出されるのは史上58人目。「そんなに遠くない昔、1回目で選ばれることがどれだけ難しいかを知った。本当に名誉なこと」と本人。同じドミニカ共和出身で仲の良いペドロ・マルチネスと抱き合って喜んだ。

 2人はともに1年目に選ばれ殿堂選手の中でも特別な存在だが、若いうちに在籍球団を出された点でも共通している。

 ペドロはご存じのように1993年のオフ、ドジャースからエクスポズにトレードされた。オルティスはツインズで6年間プレーし、通算58本塁打、打率.266。100試合以上先発で出たのは2シーズンだけだった。2002年のオフ、契約をテンダーすれば調停で年俸は200万ドルくらいになる。球団はそれでは高いと考え、プラス、ルール5ドラフトのためにロースター枠を開けたかったため、ノンテンダーとした。

 FAになったオルティスをレッドソックスが125万ドルで獲得している。「当時は殿堂など考えられないし、頭にあったのは毎日試合に出たいということだけだった」。レッドソックスでオルティスは大化けした。14年間で打率.290、483本塁打、OPS.956。10度オールスターに選ばれ、シーズン後のMVP投票で7回もトップ10に入った。

 ボストンのファンを特に熱狂させたのは勝負強い打撃。とりわけワールド・シリーズは14試合に出て打率.455、OPS1.372と驚異的な数字。04、07、13年と3度の世界一に導き、13年はワールド・シリーズMVPに選ばれている。

「良いチームメート、良いコーチに巡り合えて幸運だった。応援してくれたレッドソックスファンにも感謝している」と目を細める。対照的にツインズは03、04、06、09、10年とポストシーズンに進出したがあっさり敗退。あのノンテンダーがなければ両球団の近年の歴史はまったく違ったものになったかもしれない。

 オルティスは「ツインズにも感謝している。メジャーでは毎日出場チャンスが保証されているわけではないことを学んだ」と振り返っている。

 さて今回もバリー・ボンズ、ロジャー・クレメンスなど偉大な選手が薬物使用を理由に選出されなかった。実はオルティスも疑惑と無縁ではなかった。

 09年、ニューヨーク・タイムズ紙が、03年の検査で陽性反応が出た104人の選手の中にいたと報じたからだ。04年MLBが本格的に薬物検査を始める前の、調査のためのテストである。ゆえに彼も疑われていたのだが、16年の現役引退に際し、ロブ・マンフレッドMLBコミッショナーが「あのテストは決定的なものではない。2ケタにのぼる選手について本当に陽性だったかどうか科学的に疑わしかった。デビッドの容疑を完全に晴らすことはできないが、投票者にはそこは考慮して欲しい。彼はその後の(正式な)検査では一度も陽性反応が出ていない」と説明した。

 よってオルティスは今回全394票のうち307票を得て得票率が77.9パーセント。1回目で殿堂入りに必要な75パーセントを超えたのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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