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背番号物語

【背番号物語】中日「#2」田尾が人気を集めたナンバーは“落合ドラゴンズ”を象徴する荒木でプロ野球のトップに

 

チームひと筋の2000安打は唯一無二


新人時代の荒木。1年目から「2」を背負った


 プロ野球、特に打者の背番号で、1ケタのナンバーは古くから主役クラスの存在だが、その中でも小さいほうの数字にもかかわらず、選手としてのキャリアを「2」で通して、しかも長きにわたってプレーした選手は少ない。パ・リーグの2チームで「2」を着け続けた内野手の山崎裕之は紹介したばかりだが、この山崎の20年間が長くプロ野球のトップだった。これを21世紀に入って更新したのが中日荒木雅博だ。世紀をまたいで中日ひと筋23年間、一貫して「2」を背負い続けた内野守備の名手だが、打っても通算2045安打を積み上げた好打者だった。「2」のみで通算2000安打を超えたのは山崎と、この荒木の2人のみだ。

 荒木はドラフト1位で1996年に中日へ入団、このとき背負ったのが「2」。中日は現在も中日でプレーを続ける福留孝介巨人へ入団した原俊介をクジで外して、いわゆる“外れ外れ1位”だった荒木だが、熊本工高では遊撃手としてセンバツに出場しており、遊撃手が多い「2」を1年目から与えられたのは期待の表れでもあっただろう。荒木は翌97年に一軍デビューも、定着には時間を要した。初めて出場100試合を突破したのは6年目の2001年で、翌02年には二塁手としてレギュラーとなって規定打席にも到達したが、本格的なブレークといえるのは落合博満監督が就任した04年。二塁へ完全にコンバートされ、初めて全試合に出場、176安打を放っている。

 ただ、やはり特筆すべきは守備で、井端弘和との二遊間コンビ“アライバ”は2人で10失策のみと鉄壁。落合監督1年目にしてセ・リーグを制した中日の“守り勝つ野球”を象徴する存在となった。そこから中日は黄金時代に突入。打順でも荒木が一番、井端が二番でコンビを形成、07年には31盗塁で盗塁王に。10年には“アライバ”内でポジションを交換、「2」らしく“本職”の遊撃を守ることになったが、高木守道監督となった12年には元に戻り、打順のコンビは解消された。翌13年オフには井端が巨人へ。荒木はプロ23年目、コーチ兼任となった18年オフに現役を引退したが、熟練の守備と果敢な走塁は最後まで健在だった。

 一方で、1ケタの背番号では捕手が多いのも「2」の特徴になるが、中日の歴史では「2」の捕手は少数派だ。荒木の入団で1年目から着けていた「2」を“剥奪”されたのが現在は阪神の監督を務める矢野輝弘(燿大)。中日では芽が出ず、96年に「38」となり、阪神へ移籍した98年に「39」となってブレークしている。

職人肌の内野手とリードオフマン


 プロ野球が始まった1936年から参加している中日で、初代の「2」は外野手も兼ねた右腕の牧野潔だった。最初の内野手は3代目の石丸藤吉で、荒木と同じ二塁手。特攻隊で戦死した石丸進一の兄としても知られる。初めて5年を超えたのが2リーグ制となった50年に背負った遊撃手の土屋亨で6年間。これを更新したのが遊撃手の一枝修平で、名二塁手として名を残す高木との二遊間は“名人コンビ”と評された。一枝は中日2年目の65年に「54」から変更、71年オフに移籍した近鉄でも2年間「2」で過ごしている。阪神で1年間「1」を着けて引退した。

中日で背番号「2」を着けヒットメーカーとして活躍した田尾


 職人肌の内野手という「2」のイメージを一変させたのがドラフト1位で76年に入団、「2」を背負って新人王に輝いた田尾安志だ。土屋や一枝は打順の下位を打つことが多かったが、田尾は一番打者としてVイヤーの82年から3年連続でリーグ最多安打。タイプは違うものの、セ・リーグでは広島高橋慶彦、巨人に松本匡史ら「2」のリードオフマンが並んでいた時代でもあった。甘いマスクもあって人気も圧倒的だった田尾だが、84年オフに西武へ移籍しても「2」は変わらず。一枝と同様、2年間プレーして阪神へ移籍、「8」で91年まで現役を続けた。内野守備の職人と、ヒットメーカーのリードオフマン。この対照的な2つの要素を併せ持った荒木は、中日の「2」における完成形ともいえそうだ。

 数字は小さい背番号だが、特に中日では大きな存在といえるナンバー。荒木の引退で1年の欠番となり、2020年に後継者となったのが内野手の石川昂弥だ。

【中日】主な背番号2の選手
一枝修平(1965〜71)
田尾安志(1976〜84)
矢野輝弘(1991〜95)
荒木雅博(1996〜2018)
石川昂弥(2020〜)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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