一般的に投手は野手よりも打力が劣るが、中には打撃に優れた投手も存在する。有名なところでは400勝投手の金田正一。投手でありながら、通算38本もの本塁打を放った。また、巨人で活躍した桑田真澄も打撃に優れていたことでも知られる選手。現代であれば二刀流で活躍できたかもしれない。では、現役で「本塁打を打ったことのある投手」は誰がいるのだろうか？

現役最多は藤浪の3本塁打

　2022年2月16日時点のNPB所属選手を対象に、公式戦で本塁打を放ったことのある投手を調べ、以下にまとめてみた。
※( )内は現在の所属チーム


●藤浪晋太郎(阪神)……通算3本塁打
2014年4月15日 対広島(マツダ広島)
2018年9月16日 対DeNA(横浜)
2021年4月16日 対ヤクルト(甲子園)

　現役最多は阪神の藤浪で、2014年、2018年、2021年と3本塁打を記録している。特に2021年4月16日のヤクルト戦では、チームの得点が自身の本塁打のみという中で投げ勝った。「自身の本塁打のみの得点で勝利した」という例は、1973年の江夏豊以来、48年ぶりの快挙だった。

●山口俊(巨人)……通算2本塁打
2014年7月1日 対中日(石川県立野球場)
2016年4月9日 対ヤクルト(横浜)
※いずれもDeNA在籍時に記録

　山口は2014年に初本塁打を記録。この試合は9回まで負けていたが、自身の本塁打で同点に追いつくドラマチックな展開だった(残念ながらその後崩れて黒星)。2016年には本拠地でも投手らしからぬ鋭い一打を放っている。

●小川泰弘(ヤクルト)……通算2本塁打
2015年8月5日 対巨人戦(神宮)
2016年8月17日 対DeNA(神宮)

　ライアン小川も現役投手最多タイの2本塁打をマーク。プロ最初の本塁打は2015年の巨人戦で、先制の一打を放った。また、2016年のDeNA戦では、左中間スタンドに入る豪快な一打を記録。しかし、残念ながら2016年以降は1本も出ていない。


●秋山拓巳(阪神)……通算2本塁打
2017年8月18日 対中日(ナゴヤドーム)
2018年5月8日 対巨人(東京ドーム)

　阪神の秋山もここまで2本塁打を記録している。投手ではあるが、高校通算48本塁打を放ち、「伊予ゴジラ」とも称された打撃力の持ち主。現役最多となる3本目の本塁打が今季出るかもしれない。

●能見篤史(オリックス)……通算1本塁打
2013年5月6日 対巨人(東京ドーム)

　今季でプロ18年目を迎える現役最年長投手の能見。本塁打は阪神時代の2013年に記録している。しかし、残念ながらこれ以降は1本も本塁打は出ず。やはり投手の本塁打は出にくいようだ。

●野村祐輔(広島)……通算1本塁打
2013年9月12日 対ヤクルト(神宮)

　野村の初本塁打はプロ2年目の2013年。対ヤクルト戦で、自身の本塁打もあり見事に白星をつかんだ。この勝利で野村は自身初の2ケタ勝利に到達。自らの本塁打で花を添える形となった。

●菅野智之(巨人)……通算1本塁打
2018年5月18日 対DeNA(東京ドーム)

　巨人のエース・菅野も公式戦で本塁打を放っている。2018年5月18日のDeNA戦、同点の場面で鋭いライナー性の打球がスタンドに突き刺さり、見事に勝ち越した。

●上原健太(日本ハム)……通算1本塁打
2018年6月18日 対広島戦(マツダ広島)※交流戦

　日本ハムの上原は2018年の「交流戦」でプロ本塁打をマーク。交流戦はパ・リーグの投手が打席に立つ貴重な機会だが、さすがに本塁打となるとそう簡単に出るものではない。そう考えると、上原の一打は非常にレアな記録だといえる。

●西勇輝(阪神)……通算1本塁打
2020年6月19日 対巨人(東京ドーム)

　2020年の開幕戦では2人の投手が本塁打を記録。一人目が阪神の西で、3回に巨人の菅野から豪快な先制打を放った。開幕戦で投手が本塁打を放ったのは、2008年(中日の川上憲伸が記録)以来、通算12人目だった。


●大瀬良大地(広島)……通算1本塁打
2020年6月19日 対DeNA(横浜)

　2020年の開幕戦で、阪神の西に続いて本塁打を放ったのが広島の大瀬良だ。DeNA戦の9回に、ダメ押しとなる2ランを記録。投手による開幕戦での本塁打は通算13人目だが、「開幕日に2投手が本塁打を記録した」のは史上初だった。

　ちなみに、現在MLBで活躍している大谷翔平はNPB通算49本塁打をマーク。このうち、「投手」として放ったのは2016年7月3日のソフトバンク戦で放った1本のみとなっている。

　現役で本塁打を放っている投手は10人。最多は3本の藤浪で、2本で3人が並ぶ形となった。果たして今季、藤浪に並ぶ3本目を放つ選手はいるのか。また、現役11人目となる投手は出てくるのか。打席に立つ投手のバッティングに注目だ。

文＝中田ボンベ＠dcp　写真＝BBM