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背番号物語

【背番号物語】阪神「#1」鳥谷敬、吉田義男、弘田澄男、中込伸…基本はライバル巨人へのアンチテーゼ?

 

王や新庄よりも前に監督が


阪神で最長となる16年間、背番号「1」を着けた鳥谷


 プロ野球が始まった1936年から参加している阪神。それ以前に創設されたライバルの巨人に続く2番目に長い歴史を誇るチームだ。そのプロ野球1年目、背番号を各チームそれぞれが選手に割り振る作業に入るのだが、このとき唯一、イロハ順を採用したのが阪神。「1」の初代となったのは内野手の伊賀上良平だ。1年目から阪神で初めて満塁本塁打を放った強打者。正三塁手として活躍したが、内野すべてを守れる器用さも兼ね備えていた。伊賀上は40年いっぱいで退団。戦後の49年に大映(のち毎日と合併。現在のロッテに)でプロ野球へ復帰、「伊賀上潤伍」として54年までプレーしたが、60年に指導者として阪神へ復帰、「1」にも返り咲き、61年まで背負っている。

 伊賀上のあとに2代目となったのは戦後の46年に阪神でプロ野球へ復帰した内野手の乾国雄だったが、47年シーズン途中に退団。ライバルの巨人で王貞治が永久欠番としたのが代表格だが、多くのチームが「1」を“顔”といえる中心選手の背番号としていく一方、阪神の「1」は独自路線を突き進んでいく。初めて一般的なイメージの「1」が誕生したといえるのは、21世紀に入ってからだった。2004年に入団した鳥谷敬は1年目から「1」を背負って遊撃手として開幕スタメンを果たすと、同年9月から18年5月まで1939試合連続出場。この間、12年から16年には667試合連続フルイニング出場もあった。17年には通算2000安打にも到達。阪神だけで2000安打を放ったのは同じく遊撃手だった藤田平に続く2人目の快挙だった。

 この鳥谷の印象に上書きされた感はあるが、もともとユニークな系譜だったのが「1」。ライバルの巨人に対するアンチテーゼのように、次々に王と異なるタイプが投入されているようにも見える。こだわりがないだけかもしれないが、それこそ究極のアンチテーゼだろう。

75年に初めて監督に就任した際は「1」と着けた吉田監督


 阪神でデビューした新庄剛志が監督として「1」を着けることで話題になっているが、半世紀ほど前に監督の「1」が存在していたのが阪神。75年に就任した吉田義男だ。その10年後、2期目に阪神を日本一へと導いた吉田監督だが、このときはメジャーの監督にならって「1」を背負うも3年で退任。のちに巨人でも王が「1」で監督を務めたが、もちろん吉田のほうが先で、「81」を着けた2期目に1年目の85年から王監督の率いる巨人を破って日本一となるも、やはり3年で退任している。このとき現役時代にさかのぼって「23」が永久欠番になるという、背番号の世界では異色の存在だ。ちなみに、伊賀上が指導者として「1」に返り咲く前に「1」だったのは、吉田と鉄壁の二遊間を形成した白坂長栄で、これが現役として最後の2年間だった。

異色の顔ぶれがズラリ


 日本一イヤーの85年に「1」だったのはロッテから移籍してきて2年目の弘田澄男で、すでにベテランとなっていたものの小柄な体をフルに使った全力プレーで快挙を支えた名バイプレーヤーだ。90年代に入ると、91年からは助っ人のオマリーが94年オフにヤクルトへ移籍するまで「1」でプレー。その後継者となったのが右腕の中込伸だ。

投手ながら背番号「1」を着けた中込


 ドラフト1位で89年に入団、「99」を着けて異彩を放った中込は投手としては珍しい「1」を背負い、やはり異色の存在に。ただ、阪神の「1」は古くから好投手のいた系譜だ。2リーグ制となった50年に4代目となったのが梶岡忠義。“猛虎魂の権化”といわれた右腕の梶岡は、1年目から投手らしく「18」で投げていたが、プロ4年目にして「1」となり、2年で「3」に。投手から野手に転向したような流れだが、速球派から技巧派には転じたものの、投手として活躍を続けている。やはり背番号の世界では異色の存在で、阪神は比較的1ケタの背番号に投手が多いチームではあるが、その源流ともいえそうだ。弘田のあとにはオリックス移籍でブレークした右腕の野田浩司もプロ1年目から移籍の3年目まで「1」でプレーしている。

 期間で最長となるのは、もちろん鳥谷の16年。鳥谷は19年いっぱいでロッテへ移籍して、この21年オフに現役を引退したばかり。阪神の「1」は欠番が続く。

【阪神】主な背番号1の選手
伊賀上良平(1936〜40)
弘田澄男(1984〜87)
オマリー(1991〜94)
中込伸(1995〜2000)
鳥谷敬(2004〜19)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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