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背番号物語

【背番号物語】阪神「#3」“代打の神様”の系譜は大山悠輔の背中で…昭和の昔には江川卓の幻も

 

レギュラーは突然変異?


現在は主砲の大山が阪神の背番号「3」を背負う


“栄光の背番号”とも表現される「3」。由来は阪神のライバル、巨人長嶋茂雄によるものだろう。巨人では永久欠番。広島でも“鉄人”衣笠祥雄によって永久欠番となり、ともに国民栄誉賞を贈られるようなプロ野球選手ということもあって、“栄光”というのも、あながち誤った表現でもなさそうだ。

 阪神で2017年から「3」を背負うのは大山悠輔。不動の主砲、そして絶対的な四番打者を期待される大山は間違いなく「3」が似合うスラッガーといえる。ただ、阪神の「3」は、鳥谷敬の登場まで「1」が一般的、ある意味では“巨人的”なイメージへのアンチテーゼといった雰囲気を持った系譜だったのと似ている。巨人で「3」は中島治康千葉茂、そして長嶋と、わずか3人だけながら打線の主軸を担った男たちがリレーしたのに比べれば、入れ替わりが激しいといえる阪神。とはいえ、長嶋や衣笠のように誰からも人気や尊敬を集める主役タイプの強打者ではないものの、玄人ごのみの渋い好打者がズラリと並ぶ。

内野のユーティリティーとしても存在感を発揮した関本


 1年の欠番を挟んで、大山の前任となるのが関本賢太郎(健太郎)。1997年に入団したときは「64」だったが、2002年に「44」となり、05年から「3」に。15年限りで現役を引退するまで阪神ひと筋19年、「3」は11年の長きにわたって背負い続けた。プロ1年目から圧倒的な脚光を集め、プロ野球を国民的スポーツに昇華させたとも評価されて、背番号と同様に“四番・サード”もトレードマークだった長嶋とは対照的に、下積みも長い苦労人の関本は究極のユーティリティーともいえる名バイプレーヤー。2ケタ本塁打は1度もないが、内野すべてのポジションをこなし、さまざまな場面で見事な“代役”ぶりを披露、一方で二塁手として804連続守備機会無失策もあった。ゲーム4犠打やゲーム3死球といった渋い数字でもプロ野球の頂点に並んでいる。

“代打の神様”としてもチームに勝利を呼び込む一打を見せた八木


 関本の前が八木裕だ。関本と同様、阪神ひと筋を貫いた八木。2年目の1988年に「14」から「3」となり、翌89年には一軍に定着、その翌90年には長嶋と同じ三塁でレギュラーとなった。ヤクルトとリーグ優勝を争った92年には、そのヤクルトとの決戦でサヨナラ弾が幻となる場面も。これがプロ野球で最長の6時間26分の試合への呼び水となる。ただ、やはり八木といえばレギュラーでの活躍よりも“代打の神様”としての圧倒的な存在感、信頼感が印象的だ。故障もあって出場100試合を超えたのは93年が最後。2004年限りで引退するまで、“神様”であり続けた。

 とはいえ、阪神の「3」では八木が三塁のレギュラーとなったことは突然変異といえるかもしれない。八木や関本の前にいたのも代打で光った男たちだ。

日本一イヤーも代打の背中に


 阪神が26年ぶりリーグ優勝、2リーグ制で初の日本一を飾った1985年、西武との日本シリーズ第6戦(西武)で1回表から満塁弾を放って日本一を決定づけた長崎啓二が背負っていたのも「3」。このときは先発メンバーに名を連ねていたが、ペナントレースでは主に代打で快挙に貢献した。さらにさかのぼると、期間の長さでは八木と関本に続く3位の8年間「3」だった浅越桂一がいる。55年に入団したときは「57」だったが、長嶋が巨人へ入団した58年から「3」に。長嶋が脚光を一身に浴びる姿に背を向けるように代打の切り札として存在感を発揮、61年には代打サヨナラ本塁打もあった。やはり阪神ひと筋を貫いた浅越。八木や関本は、浅越の後継者ともいえる。

 一方、1ケタの背番号に投手が多い阪神。プロ野球が始まった36年から40年までの初代は遊撃手の岡田宗芳だったが、2リーグ制3年目の52年には梶岡忠義が「3」の6代目に。梶岡は背番号の物語で主役といえる「1」と「3」の両方を背負った異色の存在。打者であっても珍しいが、3年間「3」で過ごした梶岡は右腕だったから、ますます貴重だ。時は流れ、右腕の「3」が幻となった。江川卓だ。78年の秋にドラフト1位で阪神から指名され、与えられたのが「3」。ちなみに、巨人へ“移籍”した江川から初安打を本塁打で飾ったのが、まだ「14」で、のちに“幻の本塁打”もあった八木だった。

【阪神】主な背番号3の選手
岡田宗芳(1936〜40)
浅越桂一(1958〜65)
八木裕(1988〜2004)
関本賢太郎(2005〜15)
大山悠輔(2017〜)

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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