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ベースボールゼミナール

走者がいるときの構え方や、盗塁をうまく刺せるスローイングの動きとは?【前編】/元中日・中尾孝義に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は捕手編。回答者は現役時代に強肩強打を誇り1982年の中日優勝時にはMVPに輝いた、元中日ほかの中尾孝義氏だ。

Q.中学生です。盗塁されるといつも焦ってうまく投げられず、自己嫌悪になってしまいます。走者がいるとき構え方や盗塁をうまく刺せるスローイングの動きを教えてください。ちなみに僕はあまり肩に自信がありません。(徳島県・匿名希望・14歳)


中日時代の中尾氏


A.盗塁阻止率が5割を超えることはほとんどなく、プロも半分以上走られます

 まず、盗塁阻止はキャッチャーの見せ場ながら、実際には阻止率が5割を超えることはほとんどありません。要は半分以上は走られてしまうということです。足が速く、しかも盗塁のうまい選手が塁に出ると、どうしても慌ててしまうのはプロも同じです。

 実際、盗塁を刺すのは大変です。必ず走ってくるわけではありませんから、スローイングしやすさ優先で真っすぐばかり投げさせるとバッターに狙われてしまいますし、外してばかりなら四球になってしまいます。さらに言えば、盗塁を刺す以前に、いかに走られないかもあります。これはピッチャーとの共同作業ですね。クイック、けん制球などを交え、ランナーを足止めし、バッターを打ち取ることも考える。ベンチのサインを確認し、ランナー、バッターを観察とキャッチャーは大変です。

 まず構えですが、プロ野球を見ていると、ランナーが出た場合、普段は片方のヒザを着けて構えているキャッチャーでも着けずに構えていることが多いですよね。ヒザを着けるのは、より低く構えられ、体力的にも楽です。ただ、どうしてもスローイングに入ったり、ワンバウンドなどの暴投を追うとなると、動き出しが遅くなります。そのためランナーが出たり、振り逃げもある2ストライクになると、ヒザは着かずに構えるわけです。

 私は盗塁の可能性がある際は、瞬時に動きやすいように、頭やミットの位置は変えず、少しお尻だけを浮かす形で構えました。左右の足は平行ではなく、スローイングの形に入りやすいように左足を少し前ですね。例外は大きなスライダーがある左ピッチャーです。思ったより曲がると左足が前では追いにくさがありました。必ず走るという場面では真っすぐ系になりますが、先ほども言ったように、全球、真っすぐとはいきません。

 ただ、中学生であれば、捕球の際の足はいつもどおり平行でいいと思います。理由は2つあります。一つには捕りやすさですね。いつもと違う構えで、しかも次にスローイングがあると思うと、知らず知らずに焦りが生まれ、捕球ミスの可能性もあります。まずは正確に球を捕ることを考えてください。もう1つは、僕が左足を前に出したのは、そこからパッと立って投げる体勢をつくり、そのままノーステップで投げていたからです。肩がまだ出来上がっていない中学生には難しいし、お勧めはできません。 

<「中編」に続く>

●中尾孝義(なかお・たかよし)
1956年2月16日生まれ。兵庫出身。滝川高から専大、プリンスホテルを経て81年ドラフト1位で中日入団。89年に巨人、92年に西武に移籍し、93年現役引退。現役生活13年の通算成績は980試合出場、打率.263、109本塁打、335打点、45盗塁

『週刊ベースボール』2021年12月13日号(12月1日発売)より

写真=BBM
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