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阪神は本気で優勝したいのか?/週べ回顧1973年編

 

 4年前に創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。バックナンバーを抜粋し、紹介する連載を時々掲載しています。

江夏の登板は回避



 今回は『1973年10月8日号』。定価は130円。

 1973年9月19日、甲子園での阪神─巨人戦。首位は巨人ながらセ・リーグは前代未聞の混戦となり、いまだ全球団に優勝の可能性が消えたわけではない。

 第1戦、巨人はエースの堀内恒夫を先発に送る。倉田誠の可能性もあったが、絶対に勝つ、混戦から抜け出すという川上哲治監督の強い意思でもあった。

 対して阪神は中3日で上田二朗。これに対し、周囲からは江夏豊で行くべきでは、という声が多かった。データからしたら上田は対巨人6勝、逆に江夏は対巨人に振るわずKOが続き、上田投入は間違いではない。

 それでも藤本定義元監督は「ここは正攻法で江夏を立てるべきだ。上田はこんな長いシーズン投げたことはなく、重要な試合もこれが初めてだ。体も明らかにへばりが来ている。早い回に巨人打線に痛打を浴びるかもしれん」と断言した。

 結果的には上田は初回、王貞治に3ランを浴び、敗戦投手。江夏の登板回避の理由の1つに左手中指の豆がつぶれ、投げられる状態ではないことがあったが、最後、投球練習に姿を現し、投げる気満々だった。

 さらに次の試合も古沢憲司を使って落とし、阪神は連敗。金田正泰監督は、

「あくまでエースは江夏。ただ、大洋戦の1、3戦で先発しKOされている、登板間隔と精神的休養を考えた」

 と説明する。

 優勝争いの佳境ながら阪神ベンチが盛り上がっていなかったのは事実。ベンチの雰囲気は不思議なくらい冷めていた。

 あるOB評論家は言う。

「阪神の選手は、すべてとは言わないが、監督、コーチではなく、フロントとくっついている。彼らは監督やコーチの手柄になるようなことはしない」

 少し先走る。この年のV逸で金田監督が悪役となることが多いが、チームの体質の問題も少なからずあったのかもしれない。

 金田監督は言う。

「麻雀だって最後の最後までどん尻にいても勝つときはある。現在は大詰めには違いないがオーラスではない。まだまだ役満で上がれる望みを捨ててはいない」

 では、また。

<次回に続く>

写真=BBM
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