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都市対抗予選敗退の屈辱からスポニチ大会優勝。MVPに輝いた東芝・吉村貢司郎の投球に見た意地

 

指名漏れの悔しさも味わって


東芝はJABA東京スポニチ大会で17大会ぶり11度目の優勝を遂げ、マウンド付近に集まる歓喜の投手陣[前列右から2人目がMVP受賞の吉村]


 2021年9月29日。あの日の無念を、忘れたことはない。東芝の153キロ右腕・吉村貢司郎(国学院大)の意地を見た。

 東芝は昨年9月の都市対抗西関東二次予選で敗退。12年続いていた連続出場が途絶えた。最後の出場1枠をかけたENEOSとの第2代表決定戦。2対2の9回裏、3回から救援していた吉村はサヨナラ3ランを浴びた。

 両チームとも涙を流したが、言うまでもなく、明暗が大きく分かれた。一塁ベンチ前でENEOSが歓喜する一方、三塁ベンチ前で取材対応した東芝・平馬淳監督(法大)の言葉が忘れられない。

「先輩たちが築き上げてきたものを、今年はつなげられなかった。よく投げてくれた吉村を、責めることはできません。すべて私の責任です。非常に残念。私自身も反省していきたいです」

 名門を率いる責任を、最後にこう語っていた。

「東芝野球部として、来年に向けてやらないといけない」

 有言実行の指揮官である。10月から約半年をかけ、しっかりチームを立て直してきた。

 2022年のシーズン開幕戦となるJABA東京スポニチ大会。東芝は予選Aブロックを1位で突破し、決勝トーナメント進出。3月9日の準決勝ではライバル・ENEOSに延長10回の末に勝利(3対2)。約4時間後にプレーボールした決勝ではJR九州を下した(6対0)。

 17大会ぶり11度目の優勝。MVPを受賞したのは大卒入社3年目の吉村だった。ヤマハとの予選リーグ初戦(3月6日)で先発を任されると、8回途中2失点で勝利投手。ENEOSとの準決勝では勝ち越した10回裏途中からのピンチ(2/3回無失点)を締め、決勝では6安打完封勝利を飾った。

 昨年の都市対抗予選の悔しさを糧に、成長した姿を見せつけたのである。吉村は入社2年目の昨年、ドラフトにおいても指名漏れの悔しさを味わった。都市対抗7度、日本選手権2度の優勝を誇る名門・東芝のエースとして、2022年は会社のためにマウンドに立つ覚悟。結果を追い求め、腕を振り続けたその先にある「夢」は、着実に近づいてくるはずだ。

文=岡本朋祐 写真=松田杏子
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