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プロ野球回顧録

野茂英雄、佐々木主浩、上原浩治…最も衝撃的だった「フォークボーラー」は?

 

「フォークボーラー」の歴史は古い。日本史上初の本格的なフォークボーラーで「フォークボールの神様」と形容された元中日の通算215勝右腕・杉下茂、左足を高く蹴り上げ、右腕を振り下ろす「マサカリ投法」で剛送球と対になるフォークで通算215勝をマークした元ロッテ村田兆治……。平成以降では野茂英雄佐々木主浩上原浩治が日本だけでなく、米国でフォークの使い手として高い評価を得た。平成以降で最も衝撃的だった「フォークボーラー」はどの投手だろうか。

メジャーでも奪三振王に


野茂のフォークはメジャーの打者相手にも威力を発揮した


・野茂英雄(近鉄、ドジャース、メッツ、ブリュワーズ、タイガース、レッドソックス、デビルレイズ、ロイヤルズ)
※NPB通算成績139試合登板、78勝46敗1セーブ、防御率3.15
※MLB通算成績323試合登板、123勝109敗、防御率4.24

 上半身を大きくひねり、豪快に投げ込む「トルネード投法」で、メジャーで活躍する日本人投手のパイオニアとなった。落差の大きいフォークで三振の山を築き、「ドクターK」の異名を取った野茂。親指と薬指でボールの下側を支え、手首を固定したまま振り下ろすようなイメージで投げる。軌道も縦に鋭く落ちたり、シンカー気味に落ちるため打者は予測できなかった。NPBで新人の1990年から4年連続最多奪三振のタイトルを獲得し、メジャーでも移籍1年目の95年にドジャースで236奪三振とアジア出身の選手で史上初のタイトルを獲得。レッドソックスに在籍していた01年も220奪三振と2度目のタイトルを獲得した。

 現役時代の後半はカットボール、ツーシーム、カーブ、スライダーなどさまざまな変化球を操るようになったが、直球とフォークで日米を席巻した豪快な投球を鮮烈に記憶している野球ファンは多いだろう。

「大魔神」としてマウンドに君臨


クローザーとして佐々木はフォークを武器に相手を抑え込んだ


・佐々木主浩(横浜、マリナーズ)
※NPB通算 439試合登板、43勝38敗252セーブ1ホールド、防御率2.41
※MLB通算 228試合登板、7勝16敗129セーブ、防御率3.14

 日米通算381セーブを挙げた守護神は、東北福祉大のときに身につけたフォークが代名詞だった。フォーシームから指を開いたように握り、手首をロックせずに利かせた。当時のフォークは鋭く落ちる球種という認識だったが、佐々木は球速、落差、変化の軌道を使い分けた。140キロ台の高速フォーク、カウントを取る高めからストライクゾーンに落ちるフォーク、縫い目にかけた人さし指と中指の力を加減してシュート、スライダーのように左右へ曲がるフォークなど数種類の軌道で打者を翻弄した。

 横浜時代は「ハマの大魔神」と形容され、97年は防御率0.90、98年も0.64で38年ぶりのリーグ優勝、日本一に貢献してMVPを獲得。当時の巨人長嶋茂雄監督が「横浜戦は8回までに試合を決めろ。最後は魔神がいる」とミーティングで指示を出したという逸話も。「佐々木の球は打てない」と相手球団が白旗を上げるほどの安定感だった。

プロで習得して磨いた武器


キレ味鋭いフォークで巨人、メジャーで活躍した上原


・上原浩治(巨人、オリオールズ、レンジャーズ、レッドソックス、カブス)
※NPB通算312試合登板、112勝67敗33S23H、防御率3.02
※MLB通算436試合登板、22勝26敗95S81H、防御率2.66
 
 新人の1999年に巨人で20勝をマークし、最多勝利、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率と「投手4冠」を達成したが、このときは快速球とスライダーを織り交ぜる投球スタイルの印象が強かった。アマチュア時代にフォークを覚える投手が多い中、上原はプロで習得して磨いた。そのすごみは抜群の制球力だった。落差の大きさを使い分け、軌道もシュート回転、スライダー回転で落とすなど相手打者の特徴を見極めて自由自在に使い分ける。テークバックが小さい独特の投球フォームで球の出どころが見づらいのも、打者はタイミングが取りづらく厄介だった。

 メジャーではスプリットと呼ばれるようになり、2013年にレッドソックスの守護神で日本人初のワールド・シリーズでの胴上げ投手に輝くなど、史上初の日米通算100勝100セーブ100ホールドを達成。先発、セットアッパー、抑えとあらゆるポジションで結果を残した功績は高く評価されるべきだろう。

写真=BBM
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