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プロ野球回顧録

松井稼頭央、小坂誠、宮本慎也…あなたが「最も衝撃を受けた」遊撃手は?

 

攻守で見せた華やかなプレー


松井のスピード、パワーあふれるプレーは周囲を魅了した


松井稼頭央(西武、MLB・メッツ、ロッキーズ、アストロズ、楽天) 
※NPB通算1913試合出場 打率.291、201本塁打、837打点、363盗塁
※MLB通算630試合出場 打率.267、32本塁打、211打点、102盗塁

 松井稼頭央にあこがれてプロ野球を目指した選手は多い。トレードマークの金髪をなびかせ、攻守で見せる華やかなプレーはまさに「スター」だった。身体能力の高さには定評があったが、順風満帆だったわけではない。高卒1年目の1994年にはイースタン・リーグで24失策を記録。松井は週刊ベースボールのインタビューで「ホームのときは常に試合後、特守でしたから。バッティングでも木のバットでプロのスピードに対応しないといけないし、走塁技術もまったくなかった」と振り返る。誰よりも努力を積み重ねることで道を切り開く。

 2年目の95年に左打ちに挑戦してスイッチヒッターとなり、96年から8年連続全試合出場。97年から7年連続打率3割をマークし、97〜99年と3年連続盗塁王を獲得する。2002年から2年連続30本塁打と進化し続けた。02年には打率.332、36本塁打、33盗塁でスイッチヒッターとして史上初のトリプルスリーを達成。メジャーでも07年はロッキーズでワールド・シリーズにも出場する。楽天では13年に主将として球団初の日本一に貢献するなど、日米通算2705安打をマークした。ゴールデン・グラブ賞を4度受賞した遊撃の魅力について、「自分の能力を最大限に生かすことができましたからね。僕の最大の武器は肩の強さでした。だから、左中間、右中間へ打球が飛んでもレフトやライトの定位置近くまで行って、カットプレーを行う。そこから走者を三塁や本塁で刺すことが面白かった」と語っている。

選手間でも評価が高い日本一の遊撃守備


「平成の牛若丸」と称された小坂の遊撃守備は非常に軽やかだった


小坂誠(ロッテ巨人、楽天)
※NPB通算1371試合出場、打率.251、19本塁打、303打点、279盗塁

 遊撃の守備で衝撃を与えた選手の代表格が小坂だろう。身長167センチと小柄だったため各球団に獲得を見送られたが、社会人JR東日本東北からドラフト5位でロッテに入団すると、俊足を生かして1997年に新人最多記録の56盗塁、翌98年にプロ野球史上初の「40盗塁・40犠打」を達成するなど予想をはるかに超える活躍を見せる。見せ場は遊撃の守備だった。打球に対する反応速度がほかの選手より速く、ムダのない動きで簡単にアウトを取る。「平成の牛若丸」、「小坂ゾーン」と称されてゴールデン・グラブ賞を4度獲得し、「守備で日本一の遊撃手は小坂」と選手間でも評価が高い。同世代に同じ遊撃手でプレーした華やかな松井稼頭央、川崎宗則と違い、職人肌で寡黙な小坂は独特の魅力があった。

 伊原春樹氏は19年2月に週刊ベースボールのコラムで「パリーグ歴代No.1の守備の名手」について言及。「遊撃手で考えると、小坂誠になるだろう。同時代、西武に身体能力に優れた松井稼頭央がいたが、やはり小坂のほうが基本はしっかりとしていた。松井は体が強いがゆえに、例えばジャンプしてボールをつかんだとき、着地して、その勢いのまま送球するが、それではミスをしてしまうこともある。一方の小坂は同じような状況でもしっかりと送球の体勢を作って、右脚に体重をのせて投げる。それを素早く、パパッとやってしまうのだが、だからどんなときも安定した送球になる。打球判断も良く、一歩目のスタートも早い。投手の足元を打球が襲い、センターへ抜けたと思ったのが何度捕られたことか。戦った中で小坂が守備でミスをした記憶がない。まさに球史に残る遊撃手と言って過言ではないだろう」と称賛している。

「一流のワキ役」のすごみ


基本に忠実だった宮本の遊撃守備の安定感は抜群だった


宮本慎也(ヤクルト)
NPB通算2162試合出場、打率.282、62本塁打、578打点、111盗塁

「守備の名手」でこの選手は外せない。遊撃手で6度、三塁で4度ゴールデン・グラブ賞を獲得し、週刊ベースボールが実施した「球界200人が選んだ! 内野守備ランキング」で遊撃手1位に選出された。身体能力が並外れているわけではない。基本を大事にした体の使い方、足の運び、球際の強さとすべてが高水準。特にどんな体勢でも、悪天候のコンディションでも狂わない正確な送球が大きな強みだった。ヤクルトに入団した宮本を遊撃手に抜擢したヤクルトの恩師・野村克也氏は生前に週刊ベースボールのコラムでこう語っている。

「宮本は守備範囲が広く、打球方向をあらかじめ読んでいた。打席に立っているバッターは三遊間の打球が多いか、二遊間の打球が多いか。野球とは確率のスポーツであり、より確率の高いものを選択していく。そういった野球の根本を、彼はよく知っていたということだ。肩はさほど強くなかったが、スピーディーかつ堅実なプレー。スローイングの正確さが光っていた。本人もスローイングには相当自信を持っていたようだ。最初のうちはよく『お前は(守るだけの)自衛隊だな』と冗談を言っていた。だが、チームバッティングに長け、ベンチの期待にはいつもしっかり応えてくれた。その積み重ねで通算400犠打だけでなく、通算2000安打まで成し遂げた。いつか彼に『一流のワキ役になれ』と言ったことがあったが、最高のワキ役として現役生活を全うした」

 松井や小坂と違ってパッと見える形ですごみが伝わるわけではないが、熟練した守備技術で球史に名を刻む選手に上り詰めた。

写真=BBM
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