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2022センバツ

【2022センバツ】大阪桐蔭が4年ぶりの初戦突破。Vへ「大会No.1捕手」を証明した松尾汐恩

 

先輩からの伝統を継ぐ正捕手


大阪桐蔭高は4年ぶりの春初戦突破。正捕手・松尾が攻守でチームをけん引する[右は西谷監督]


■第6日第1試合(3月24日)
大阪桐蔭(大阪)3−1鳴門(徳島)

「大会No.1キャッチャー」を証明したと言っていい。大阪桐蔭高は鳴門高との1回戦で勝利(3対1)して、優勝した2018年春以来の初戦突破を遂げた。背番号2を着ける松尾汐恩(3年)が、1失点で完投した先発右腕・川原嗣貴(3年)の良さを最大限に引き出し、抜群のインサイドワークで貢献している。

 この日の1勝で甲子園通算57勝目(歴代3位)を挙げた西谷浩一監督は報徳学園高(兵庫)、関大を通じて捕手。指導者としてこだわってきた一つは、キャッチャーの育成である。

 西谷監督は過去に春3度、夏4度の甲子園制覇へと導いているが、好捕手に恵まれた。17年ぶりの全国制覇を遂げた2008年夏は有山裕太(奈良学園大−元四国IL・香川)、12年に同校初の春夏連覇を遂げた際には2年生・森友哉(西武)が、右腕エース・藤浪晋太郎(阪神)を好リード。14年夏の優勝時には横井佑弥(国学院大−元JFE東日本)がけん引し、17年春のセンバツ優勝時は「歴代最高の主将」と言われる福井章吾(慶大−トヨタ自動車)が頂点に立った。そして、史上初となる2度目の春夏連覇を果たした18年は、「最強世代」と言われたメンバーでマスクをかぶった小泉航平(NTT西日本)がディフェンスを引き締めた。

 大阪桐蔭高の部訓は「一球同心」。先輩からの伝統を継ぐ正捕手は、松尾である。昨春のセンバツ1回戦(対智弁学園高)では途中出場も初戦敗退。レギュラーとして甲子園に立った昨夏も2回戦敗退。自身は近江高との2回戦で山田陽翔(現3年)から本塁打を放ったが、チームが負けてしまえば、喜べるはずもない。この試合、4対4の8回裏から救援した2番手・川原が2失点で勝ち越しを許した(4対6)。同級生右腕の悔しさを知るだけに、また、自身の反省もあり、一冬を越えて、今センバツで完投勝利へ導けたのは格別だった。

「司令塔」として3つの良さ


 松尾はまさしく「司令塔」として、試合を動かしていた。良さは3つある。

 まずは、捕球。投手が投げやすいように構え、ミットを動かさず、パチン! と心地良い音を響かせる。ワンバウンドも体で止め、ボールを後ろへ逸らさない。遠投110メートルの強肩を武器とした、送球の安定感も光る。ボールが外れ、やや体勢が崩されても、二盗を阻止できる。そして、元気良く半袖で、ジェスチャーが分かりやすく、チーム全体を鼓舞。1年秋に遊撃手から捕手にコンバートされたが、キャリアの浅さを感じさせないほどの「安心感」がある。

 昨秋の公式戦では5本塁打を放ち「打てる捕手」としてNPBスカウトの注目を集めている。今春のセンバツでは、3年ぶりにアルプス席の生演奏が復活したが、松尾が打席に立つと、18年の春夏連覇メンバー・根尾昂(中日)のテーマが流れてくる。三番で出場した1回戦は無安打だったが、何かをやってくれそうな雰囲気が漂う。捕手としては包容力のある森、打者でも同校先輩・藤原恭大(ロッテ)の勝負強さを目指している。「束になって泥臭く」が今チームのテーマである大阪桐蔭高は4年ぶりの優勝へ、松尾が攻守のキーマンだ。

写真=宮原和也
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