週刊ベースボールONLINE

2022センバツ

【2022センバツ】投打にわたる気迫のプレー。“春の主役”へと躍り出る近江・山田陽翔

 

「一戦必勝。目の前の試合を勝つ」


近江高の主将・エース・四番の山田はチームを8強進出へと導いた


■第7日第1試合(3月25日)
近江(滋賀)7−2聖光学院(福島)

 人のために動く。人のために汗をかくと、より一層、力が湧き出ると言われる。責任が伴うからだ。ただ、その根底には、自分のために全力を尽くすという大前提がある。

 近江高は開幕前日にセンバツ出場が決まった。コロナ禍で京都国際高の出場辞退に伴う、近畿地区補欠1位校の繰り上げ出場である。近江高は大会2日目、長崎日大高との1回戦を延長13回タイブレークで制した(6対2)。バタバタの初戦を終え、近江高・多賀章仁監督は「京都国際さんの分まで思い切りやろう」と、選手たちに指示したことを明かした。

 1回戦から中4日。初戦に続き、多賀監督が表現する「魂」を体現したのが主将で四番・エースの山田陽翔(3年)だった。

 1回表の立ち上がりは3四死球と、やや制球が不安定で、先制点を許している。1回戦は165球の熱投。近畿大会8強に進出した昨秋はコンディション不良により登板機会がなく(外野手として出場)、今センバツが復帰登板。故障明けで、疲労が残っていたとは思われるが、報道陣の前では「なかったです!」とキッパリ。チームの「顔」である山田が、周囲に弱気な姿勢を見せるはずもない。

 1点を追う1回裏、一死一、三塁で打席に山田を迎えた。聖光学院高の好右腕・佐山未來(3年)の内角に詰まり、三ゴロ併殺打に終わる。一塁ベースへは駆け抜けるのではなく、頭から突っ込んだ。投手のヘッドスライディングは故障のリスクがあり、称賛されるプレーではない。しかも、初回。自然と気持ちが出たようだ。それが、山田のポリシーである。

 早くもユニフォームは真っ黒。チームリーダーの「魂」が乗り移ったのか、近江高は2回裏に5得点のビッグイニングで逆転する。山田は尻上がりに調子を上げ、87球の省エネ投球で、5安打2失点で完投した。試合後は自身の投球よりもまず、相棒を称えるあたり、山田の人柄がにじみ出ていた。

「捕手の大橋(大翔)が『下半身を使え!』『下半身を使え!』と。(2回以降は)立て直すことができました。縁の下の力持ちである、大橋がMVPです!!」

 近江高は昨夏のベスト4に続き、今大会も2003年以来となるベスト8進出を遂げた。山田と同様、昨夏の甲子園で4強進出の原動力となった京都国際高の左腕・森下瑠大(3年)とは、親交があるという。投打にわたる気迫のプレーは間違いなく、熱きメッセージとして届いているに違いない。主将・山田は言う。

「一戦必勝。目の前の試合を勝つ」

「四番・ピッチャー・山田君」。甲子園に響き渡るアナウンスは心地良い。近江高の「顔」は、2022年春の「顔」へと躍り出ようとしている。

写真=牛島寿人
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング