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プロ野球はみだし録

開幕戦で新ルール開始も“疑惑の本塁打”。篠塚は「審判がホームランと言えばホームランでしょ」【プロ野球はみだし録】

 

審判が6人から4人に


“疑惑の本塁打”に対して、審判に猛抗議する野村監督


 プロ野球のルールが“微調整”されるのはシーズンオフのこと。開幕戦は、それが公式にスタートする最初の試合ということになる。ただ、“微調整”とはいえども、それが大きな混乱に発展することも少なくなかった。その最たるものは1990年のセ・リーグ開幕戦になるのではないか。

 巨人ヤクルトを本拠地の東京ドームで迎え撃った4月7日の開幕戦で事件は起きた。この90年からセ・リーグは審判を従来の6人から4人に削減。これが初日から試合を紛糾させる。ヤクルトは野村克也監督が就任して最初の試合でもあり、前年の日本一チームでもある巨人を相手に善戦。4回表に先制、その裏には同点とされるも、7回表、8回表と1点ずつ加えて、2点をリードしていた8回裏のことだった。ヤクルト先発の内藤尚行は好投を続けていたが、一死から二番の篠塚利夫が右翼ポール際に大きな一撃を放つと、打球はファウルグラウンド側のスタンドへ入ったが、塁審はポールを巻いたとして本塁打と判定。まず右翼手の柳田浩一が「完全なファウル」と抗議すると、続いて野村監督も猛抗議、内藤はグラウンドに悔しさを叩きつけた。

 最近ならビデオ判定に持ち込まれるケースだ。だが、判定は覆らず。篠塚の打球は2ランとなり、同点に。試合は延長戦に突入、14回裏に押し出しで巨人がサヨナラ勝ち。野村監督は「届くか届かないかの距離で(ポールを)巻くわけがない。俺の筋書きにないことが起こった。巨人は強いはずだよ」と吐き捨てた一方で、打った篠塚も「目が悪いので、よく見えなかった。審判がホームランと言えばホームランでしょ」と、なんとも歯切れが悪かった。この篠塚の打球は篠塚の“疑惑の本塁打”と表現されるが、もちろん篠塚に疑惑があるわけではない。

 ちなみに、このとき延長戦は15回まで、引き分けは再試合など変更が多いタイミングでもあり、あと1イニングで再試合だったことになる。結果的にはセ・リーグで初めて開幕戦を押し出しサヨナラ勝ちで飾った巨人は、開幕5連勝と最高のスタート。その勢いのまま空前の独走で9月8日にリーグ優勝を決めた。

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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