週刊ベースボールONLINE

2022センバツ

【2022センバツ】大阪桐蔭ナインが背負う広島商の無念「耐えて、耐えて、しぶとく戦う」

 

試合開催は当たり前でない現実


大阪桐蔭高・西谷浩一監督は2回戦[対広島商高]の不戦勝を受け、大会開催の意義について、選手たちにあらためて説明した


 3月25日に第7日を終え、計21試合を消化した。この時点で大会試合数(31)を折り返していたが、25日の夕刻、大会本部から緊急連絡が入った。新型コロナウイルスの集団感染による、広島商高の出場辞退である。開幕前日(17日)に出場辞退した京都国際高に続く事態となった。丹生高(福井)との1回戦で勝利した広島商高は、大阪桐蔭高との2回戦を控えていたが、無念の不戦敗となった。

 今大会のPCR検査は出場32校のチーム関係者と大会関係者を対象とした「大会前検査」と1回戦勝利校(16校)を対象とした「大会中検査(1)」。そして、準々決勝勝利校(8校)と大会関係者を対象とした「大会中検査(2)」が行われる。つまり、選手は最大3回の検査を実施。感染者や感染が疑われる者が発生した場合は、緊急対策本部で対応を協議する。大会参加の可否は「新型コロナウイルス感染拡大防止ガイドライン」を下に総合的に判断。個別の事案である際には選手の入れ替えで対応するが、京都国際高と広島商高は「集団感染」と判断され、両校から辞退の申し出があった。

 昨夏は初戦(2回戦)を前に宮崎商高、1回戦を突破した東北学院高(宮城)が出場辞退した。今大会もあらためて「試合開催は当たり前ではない」という現実に直面している。

 大阪桐蔭高・西谷浩一監督は広島商高の出場辞退を受けて、26日の記者会見で「予期せぬこと。動揺している」と話した。本来はこの日の第3試合で2回戦を戦う予定だった(雨天中止により、甲子園球場内の室内練習場で2時間の公式練習)。

 広島商高・荒谷忠勝監督からは電話が入った。同じ生徒を預かる立場であり、気持ちは痛いほど分かる。西谷監督は心が締めつけられる思いだったという。

「第一声は『ご迷惑をお掛けしました』と。とんでもないです、と言わせていただきました。自分のチームの対応に大変なときにご配慮をいただき『準備をされてきたのに、試合ができず申し訳ありません。ご迷惑をお掛けしましたけど、選手の皆さんには次の試合に頑張っていただきたいです』と。とんでもないです。私のほうからは、選手の皆さんの体、健康の回復、1日も早く良くなることをお祈りいたします。しっかりと次の試合に向けて頑張ります、と。ありがたいお電話をいただきました。心情を察するに余りあります」

 西谷監督はミーティングで選手たちに伝え、大会参加の意義について再度、確認。指揮官の言葉を受けた星子天真主将(3年)は言う。

「自分たちは、試合をやらせていただける権利がある。広島商さんは悔しい思いをされている。広島商さんの思いも、背負って戦う。自分たちは良い準備をしていきたい。こういうご時世で野球をやらせていただいているのは、ありがたいこと。しかも夢舞台。野球をやれるうれしさをかみ締めています。チームの中でもずっと話しています。耐えて、耐えて、しぶとく戦っていきたいと思います」

 春のセンバツは大会終盤に差し掛かっている。主催者は25日に「勝ち残った出場校の皆さんが最後まで安心して実力を発揮できるよう、万全を尽くしていきたいと思います」とコメントを出した。すべての大会関係者、高校野球ファンの共通の願いである。

写真=石井愛子
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング