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【MLB】試合時間の短縮に? 2023年メジャーでもピッチクロック導入へ

 

2023年から走者がいないときは14秒以内、走者がいるときは19秒以内の投球が求められるようになった。しかし、プレートを外せば、ピッチクロックは0秒から始められるという抜け道も残っているが……


 2023年シーズンからMLBでピッチクロックが導入される見通しとなった。MLBは近年、試合のスピードアップとともに、打って走ってとアクションを増やすことを目指しているが、昨季マイナーで行われた実験で手応えを得た。リーグの野球運営部門のトップで、実験の責任者モーガン・スォードさんは、筆者に「ローAウエスト・リーグでピッチクロックを15秒、走者がいるときは17秒にし、試合時間を平均21分も短縮できた。三振率、四球率は下がり、一方で打球、盗塁など、攻撃のアクションは増えた。現場で見た人はエキサイティングな良い試合だったと高い評価を与えてくれた」と説明した。

 21年シーズンの試合平均時間は史上最長の3時間10分、10年が2時間50分だったから、20分も長くなっており、打球数も減少、21年はヒット数より三振数のほうが多かった。そこでルールコミッティの承認を得たあと、労使交渉中に選手会に打診。走者がいないときは14秒、いるときは19秒で準備を進めることになった。

 良い流れだとは思うが、もっと詰めなければならないことがある。マイナーでのピッチクロックの実験は15年に始まり、18年に走者なしで15秒、ありで20秒としたが試合時間は平均3時間前後と効果はなかった。というのは投手がプレートを外せば何度でもクロックをリセットできたからだ。

 21年のローAウエスト・リーグではそういった抜け道を禁じ、しかもけん制を2回まで、3回目のけん制で刺せなければボークになるとした。「けん制球が減ったことで、ゲームをスムーズに進行させられた」とスォードさん。だから21分も短縮できたわけで、この辺の付随するルールでベテラン投手の理解と協力を得るのは並大抵ではないと思う。

 一方で問題なく導入されそうなのはベースのサイズを38.1センチ四方から45.7センチ四方と大きくすること。「3Aで実験したが、野手はサイズの違いに戸惑うことはなかったし、盗塁成功率が少し高まった。何より重要なのは接触プレーによるケガの防止につながった」と言う。

 効果があるかどうか不明なのはシフトの禁止だ。2Aでシーズン後半に実験したが、打球が飛んだときの打率「BABIP」で見ると.308で、シフトを禁じていなかった18年の.309、19年の.305に比べて変わらない。引っ張った打球がヒットになりやすくなる一方、反対方向に飛んだ弱い当たりがヒットになるケースが減ったからだ。

 ただシフトはマイナーよりもメジャーで頻繁に使われており、全投球あたり16年に13.7パーセントだったのが、21年は30.9パーセントと飛躍的に増えている。メジャーだとインパクトがあるのかもしれない。21年のリーグ打率は.244と1972年以来の低い数字。いかにヒットを増やし、打って走ってとアクションを増やすかである。

 ちなみに近年で一番打率が高かったのは何年かと調べてみると、99年の.271だった。当時はステロイド時代で打者が幾分有利だったなと思い出すのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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