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プロ野球記録ノート

開幕戦新人スタメン捕手 山倉和博、阿部慎之助、炭谷銀仁朗…過去の11人のその後の活躍は【プロ野球記録ノート】

 

2リーグ制以降12、13人目の快挙


過去に巨人・阿部ら11人が新人で開幕戦スタメンマスクをかぶった


 3月25日に2022年のプロ野球が開幕。楽天生命パークの楽天対ロッテ戦で、楽天・安田悠馬(愛知大)、ロッテ・松川虎生(市和歌山高)と2人のルーキーがスタメンマスクをかぶった。ルーキーが開幕スタメンマスクを被るのは2リーグ制以降12、13人目の快挙。特に松川は高卒ルーキーとしては史上3人目の先発マスクだった。

 2リーグ制以降の開幕スタメン新人捕手は(※は高卒)、

年度  選 手   球 団  前所属
1950 徳網  茂 阪  神 大洋漁業
1950 山崎 明男 広  島 大西製紙
1950 井上親一郎 国  鉄 神奈川商工高コーチ
1952 根本 陸夫 近  鉄 コロムビア
1955※谷本  稔 大  映 八幡浜高
1978 山倉 和博 巨  人 早大
1980 大石 友好 西  武 河合楽器
1997 清水 将海 ロ ッ テ 青学大
2001 阿部慎之助 巨  人 中大
2006※炭谷銀仁朗 西  武 平安高
2016 戸柱 恭孝 DeNA NTT西日本
2022 安田 悠馬 楽  天 愛知大
2022※松川 虎生 ロ ッ テ 市和歌山高

 の13人。

 1950年は3人いるが2リーグ制になった年。8球団から一気に15球団(セ=8球団、パ=7球団)になり選手自体が足りなかった。そこで社会人(実業団)から選手を入団させていた。3人ともに社会人野球の選手で、広島山崎明男は開幕から12試合で9試合にスタメンマスクをかぶったが、結局15試合に出場して退団した。この年の正捕手は117試合でマスクをかぶった阪田清治。国鉄(現ヤクルト)の井上新一郎も開幕からスタメンマスクをかぶったが、6月に入団した宇佐見一夫にその座を奪われた。異色だったのが徳網茂。新球団の毎日(現ロッテ)に入団が決まったが、阪神の正捕手だった土井垣武が毎日に移籍。困った阪神は開幕前に大館勲とのトレードという形で徳網を獲得。徳網は正捕手として135試合に出場、打率.251、2本塁打、69打点と活躍した。

 4人目は1952年にコロムビアから近鉄に入団した根本陸夫。近鉄は前年、青池良正が80試合にマスクをかぶったが、この年は根本46、青池は48試合と併用されている。根本はのちに広島、西武、ダイエーの監督を務めるがGM的な存在でもあり、根本監督の後にはいずれのチームも黄金期を築いた。

 1955年には初の高卒が開幕戦に登場した。大映が八幡浜高から入団した谷本稔を開幕戦のスタメンで起用。谷本はこの年チーム最多の74試合にスタメン出場をしている。

連覇翌年に白羽の矢


78年ドラフト1位で巨人に入団した山倉も開幕戦でスタメン出場


 その後、なかなかルーキー捕手のスタメン出場はなかった。1969年に阪神はドラフト1位の即戦力・田淵幸一を獲得したが、田淵もスタメン出場は開幕3試合目だった。

 1978年、巨人のドラフト1位・山倉和博(早大)が23年ぶりにルーキースタメン捕手となる。巨人は前年までリーグ連覇を達成して、ベテランの吉田孝司が正捕手だったがリタイア。新人の山倉に白羽の矢が立った。開幕から14試合連続スタメンマスクで10勝2敗2分けと好成績を残したが、優勝争いが激化した後半戦は吉田にスタメンを譲ることが多かった。

 山倉の1年目は、

69試合、26安打、3本塁打、9打点、打率.197

 スタメンマスクは48試合だった。

 1980年、所沢に移って2年目のライオンズもルーキー捕手を起用した。西武1年目の1979年はロッテから獲得した大ベテランの野村克也が開幕マスク。野村はチーム最多の56試合にスタメンで、阪神から移籍してきた田淵が23試合と捕手には苦労する部分もあった。そこで翌年は河合楽器から入団した大石友好を起用した。ただし2試合目は野村、3試合目は吉本博とスタメン捕手は固定できず、それでも大石はチーム最多の60試合にスタメン出場。

 1年目は、

 77試合、32安打、0本塁打、8打点、打率.205

 その後、伊東勤出現まで第1捕手の座を守った。

 1997年のロッテは青学大からドラフト1位で獲得した清水将海を開幕スタメンで起用。清水は史上12人目の開幕戦ルーキー本塁打を放ち、守っては小宮山悟の完封を演出した。最高のスタートを切った清水だったが、1年目は、

 77試合、30安打、1本塁打、8打点、打率.169

 の成績。スタメンは70試合とチーム最高だったが、吉鶴憲治との併用される形だった。

 清水の4年後の2001年。ドラフト1位で鳴り物入りで巨人に入団した阿部慎之助(中大)が、チームとしては山倉以来23年ぶりに開幕スタメンを射止めた。前年は日本一となり正捕手は37歳のベテランの村田真一だったが、阿部は打力を買われての抜擢だった。阿部はその期待に応え、開幕の阪神戦で2安打4打点の大活躍。その年の成績は、

 127試合、87安打、13本塁打、44打点 打率.225

 スタメンでも117試合に起用された。ただ規定打席には到達せず、その後の阿部の活躍を見ると物足りない成績と思えるが、それほど新人捕手にとっては守備の負担が大きいということなのだろう。

高卒では炭谷が2人目


06年、高卒ながら開幕からスタメンマスクをかぶった西武・炭谷


 2006年、51年ぶりの高卒ルーキー開幕スタメンで話題になったのが西武の炭谷銀仁朗。平安高から高校生ドラフト1巡目で入団。オープン戦では打率.321をマークし開幕戦に名を連ねた。オリックス戦ではいきなり4打数1安打、2試合目には同じ10歳代の涌井秀章とのバッテリーで勝利するなど、期待を抱かせる活躍を見せた。

 54試合、25安打、3本塁打、14打点 打率.181

 しかし、その後は前年まで正捕手だった実力派・細川亨に巻き返され、正捕手の座は奪えなかった。

 2015年のDeNAは嶺井博希61、黒羽根利規42、高城俊人40とスタメン捕手は3人。固定できていなかったが、翌2016年、ラミレス新監督となり、いきなりNTT西日本からドラフト4位で入団した戸柱恭孝を開幕戦で起用。先発の井納翔一を7回無失点と好リード。チームの開幕戦勝利に貢献、2戦目でプロ初ヒット、3戦目でプロ初本塁打と打撃の方でも結果を残した。

 124試合 83安打 2本塁打 23打点 打率.226

 とシーズンでも正捕手の座を手にし、チームも11年ぶりのAクラス入りの3位と結果を残した。

 過去11人の捕手を見ると、開幕戦で出場してもすんなりと正捕手の座につけないことが分かる。

 ロッテの松川は開幕戦で3投手を好リードし完封勝ち。2戦目は9回に追いつかれ、最後はサヨナラ負けを喫したが2安打をマーク。一方、楽天の安田も2戦目でプロ初安打を記録した。ルーキーにとっては正捕手の座はまだまだ厳しいが、今季の活躍が期待される。

 ただ開幕戦でルーキー捕手を起用したチームはいまだに優勝していないのは気がかりだが……。

文=永山智浩 写真=BBM
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