苦しい戦いの中、楽しみな材料
新庄剛志監督ことBIGBOSS率いる
日本ハムが開幕から5連敗と苦しい滑り出しとなった。
シーズン初白星が遠い。開幕3連戦(PayPayドーム)でソフトバンクに同一カード3連敗を喫すると、本拠地・札幌ドームに戻って立て直したいところだったが、29日の
西武戦は相手を上回る7安打を放ちながら今季初の零封負け。先発のエース・
上沢直之が8回4失点、126球の粘投だったが援護できなかった。30日の同戦も初回一死満塁から
石井一成の右犠飛で先制したが、その後の好機を生かせず突き放せない。先発の
加藤貴之は5回まで1安打無失点と完ぺきな投球だったが、6回に7本の集中打を浴びて5失点と踏ん張れず逆転負けを喫した。
「開幕から5連敗しましたが、1試合1試合の試合内容を見ると決して悪くない。一軍で実績の少ない選手が多いので致し方ない部分もありますが、ミスが重なるとなかなか勝てない。他球団に比べると戦力は見劣りするので我慢の戦いが続くと思います。手堅い守備、一つ先の塁を狙う走塁など個々の選手が『野球脳』のレベルを上げることを目指す新庄監督の方向性は間違っていない。1つ勝てば雰囲気はガラッと変わると思います」
苦しい戦いが続いているが、楽しみな材料も見られる。新外国人の
アルカンタラは3月26日のソフトバンク戦(PayPayドーム)で2打席連続アーチを放つなど、150キロを超える直球に振り負けず変化球にもきっちり対応する。開幕投手を務めたドラフト8位右腕・
北山亘基、同じく開幕戦で救援登板した高卒2年目・
根本悠楓は小気味良い投球で大きな可能性を感じさせた。
右翼席に消える特大のアーチ
そして、日本ハムファンだけでなく野球ファンの度肝を抜く一発を放ったのが、不退転の決意で今季に臨む高卒5年目の長距離砲・
清宮幸太郎だ。「四番・一塁」で今季初出場した3月26日のソフトバンク戦。4点を追う9回に
藤井皓哉の直球を振り抜くと、高々と舞い上がった打球に外野手も動かない。右翼席に消える特大の1号ソロに衝撃が走った。この一撃は決して偶然ではない。4回もライトポールの上を舞う大ファウルを放っていた。BIGBOSSが初めて行ったリクエストは失敗に終わったが、昨年までの清宮には見られない打球だった。
「球界を代表するスラッガー」と将来を嘱望されたが伸び悩み、昨季は自身初の一軍出場なし。BIGBOSSの指令で103キロから94キロと9キロ減量したのは今季にかける決意の表れだった。オープン戦では結果が出ずに苦しんだが、指揮官と
稲葉篤紀GMの助言で開幕直前に大幅な打撃改造を断行。オープンスタンスからスクエアになり、手首を動かしてバットのヘッドを大きく揺らす動作も消えた。
「四番で起用し続ける価値がある」
「構えから振りだすまでの動きがコンパクトになり、コンタクト率が上がっている。見逃し方も差し込まれたような以前の形と違い、軸がブレずに自分の間で見逃せている。今の状態を続けられれば、選球眼も良くなっているので四球で出塁できるし、甘い球をきっちり捉えて安打も出る。コンパクトに打っても打球は飛びますからね。今、日本ハムで一番怖い打者ですよ。新庄監督の方針で日替わり打線になっていますが、清宮は四番で起用し続ける価値があると思います」(他球団のスコアラー)
清宮は日本ハムの救世主になれるか。
写真=BBM