注目度は高くなかったドラフト1位
2位に4セーブ差をつける6セーブでリーグトップに立つ大勢
開幕9試合終了時点で8勝1敗。見事なスタートダッシュを切った
巨人の立役者がドラフト1位右腕・大勢だ。開幕8戦で6セーブと首脳陣の期待に見事に応えたが、長丁場のペナントレースで無理はさせられない。3日の
阪神戦(東京ドーム)はベンチ入りメンバーから外れた。
新人の守護神で大活躍したのが
広島・
栗林良吏だ。1年目の昨季は53試合登板で0勝1敗37セーブ、防御率0.86。侍ジャパンに選出された東京五輪でも守護神を務め、金メダル獲得に大きく貢献した。
DeNA・
山崎康晃も入団1年目で当時の
中畑清監督に抑えに抜擢されると、58試合登板で2勝4敗37セーブ7ホールド、防御率1.92と好成績をマークしている。栗林はフォーク、山崎康はツーシームと絶対的なウイニングショットがあった。走者を出しても失点は許さないマウンド度胸も備わっていた。
一方、大勢はどうだろうか。栗林、山崎康と同じドラフト1位だがその注目度は違った。栗林は「社会人No.1投手」と評価が高く、山崎康も
有原航平(現レンジャーズ傘下所属)の「外れ1位」だが、DeNA、阪神の2球団が競合している。一方、大勢は関西国際大で度重なる故障により、リーグ戦通算4勝3敗と目立った成績を残していない。昨秋のドラフトで、巨人が1位指名した
隅田知一郎(現
西武)を抽選で外し、「外れ1位」で大勢を指名した時は驚きの声が上がったほどだった。
開幕戦でプロ初セーブ
「直球の威力は大学球界屈指だが、変化球の精度が課題で故障も多かったので球団によって評価が分かれました。即戦力ではなく、少し時間がかかると思ったので開幕からこれほど投げられるとは思わなかった。まだペナントレースが始まったばかりなので評価するのは早いですが、球界屈指のクローザーになる可能性を秘めている。巨人スカウトの慧眼は評価されるべきですね」(スポーツ紙記者)
3月25日の開幕戦・
中日戦(東京ドーム)で2点リードの9回に登板。二死満塁ピンチを切り抜け、球団史上初となる新人で開幕戦のセーブを挙げると、その後もセーブを積み重ねていく。今月1日、2日の阪神戦(東京ドーム)で2試合連続失点を喫したが、痛打を浴びたのはいずれも抜けたフォーク。自慢の直球ははじき返されていない。1点差に詰められた2日の同戦もなお一死二、三塁のピンチで四番・
佐藤輝明を内角高めの直球で遊直併殺打に切り抜けた。
変化球の精度を磨けば盤石
今後の課題はスライダー、フォークなど変化球の精度を磨くことだろう。直球一辺倒では打者も対応してくる。きっちりコーナーに決まる変化球は空振りを奪えているだけに伸びしろは十分にある。
大勢の大活躍はチーム内に相乗効果をもたらしている。殻を破れなかった18年ドラフト1位右腕・
鍬原拓也もセットアッパーで奮闘。故障などで2度の育成契約を経験したが、今年は春先から実戦でアピールして開幕前に支配下登録を勝ち取ると、開幕から5試合連続無失点で4ホールドを挙げている。
新戦力の台頭はチームに大きなプラスアルファをもたらす。若き守護神の大勢がV奪回のために右腕を振り続ける。
写真=BBM