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高卒1年目でロッテの正捕手 松川虎生に「10年に1人の逸材」の声が

 

物おじしない性格


捕手として高卒新人とは思えぬ働きを見せる松川


 もはや、誰も高卒1年目という視線で見ていないだろう。ロッテの正捕手に最も近い存在として頭角を現しているのが、ドラフト1位ルーキー・松川虎生だ。

 グラウンドではどっしりした存在感で投手陣を見事にリードする。3月25日の楽天戦(楽天生命パーク)で高卒ルーキーでは史上3人目となる開幕戦の先発マスクをかぶると、4対0と快勝。先発で7回3安打無失点の好投を見せた石川歩がヒーローインタビューで「調子自体はそんなに良くなかったですけど、松川にしっかりリードしてもらって抑えられたと思います。高校生、高卒新人じゃないみたいでした」と絶賛していた。

 先輩たちにも物おじせず、積極的にコミュニケーションを取る。大物ぶりはチームメートからの証言からも垣間見える。4月3日の西武戦(ZOZOマリン)で4対2と快勝した際は、8回3安打13奪三振1失点で今季初白星をマークした佐々木朗希と共に好リードを見せた松川もお立ち台へ。佐々木朗は「試合前は緊張していたんですけど、(捕手の)松川が『全然大丈夫っしょ』って言ってくれたんで、大丈夫かなと思って投げました」と白い歯を見せて明かした。松川は謙遜していたが、そのキャラクターも愛されている証だ。

4月3日の西武戦では佐々木朗[中]、平沢[右]と共にヒーローインタビューを受けた


 ロッテはアマチュアで注目のスター選手を他球団との競合覚悟で獲得することに定評があった。ドラフトで2015年は平沢大河、16年は佐々木千隼、17年は安田尚憲、18年は藤原恭大、19年は佐々木朗希と抽選で見事に「当たりクジ」を引き当ててきた。昨秋のドラフトでは市立和歌山高でバッテリーを組んだ小園健太(現DeNA)、西日本工大・隅田知一郎(現西武)に指名が集中することが予想された中で、ロッテは松川を「一本釣り」して驚きの声が上がった。松川自身も「1巡目で名前を呼ばれると思っていなかったので、びっくりした気持ちが強いです」と本音を吐露したが、その実力を思えばドラフト1位は決して不思議ではない。

数字に表れない魅力


 鳥取東中では貝塚ヤングでプレーし、小園とバッテリーを組んで3年夏に全国優勝。市和歌山高でも1年春からベンチ入りし、2年秋の新チームから主将に。高校通算43本塁打の打棒に加えて、二塁送球は1秒8台と強肩でコントロールも正確だ。ブロッキング能力も高く、高校生ではトップレベルの捕手という位置づけだった。松川には数字に表れない魅力がある。チームに安心感を与えるオーラが漂っていた。

「捕手を育てることは簡単ではありません。過去にも将来を有望視されていた捕手がいましたが、大成したケースは多くない。打撃、守備技術だけでなく、プロの世界で扇の要としてチームを引っ張る精神的な強さも求められる。その重圧につぶれて伸び悩んでしまうことが多いんです。松川はプレーの能力が高いだけでなく、心身共にタフでチームメートを束ねる人間力が備わっています。ロッテがドラフト1位で指名しましたが、十分にその価値がある。捕手では10年に1人の逸材でしょう。球界を代表する名捕手になる可能性は十分に秘めていると思います」(スポーツ紙記者)

阪神Vに由来した名前も……


 もちろん、プロの壁は高い。特に打撃はすぐに通用するほど甘くはない。高校生とプロの一線級の投手では直球の速さ、変化球のキレが別次元だ。松川も試行錯誤は続くが、逆方向に伸びる打撃の片鱗は見せている。3日の西武戦では2点リードの6回一死二塁でZOZOマリンの右中間を破る適時二塁打。プロ初打点を叩き出し、井口資仁監督も手を叩いて喜んでいた。

 大阪出身で虎生という名前は阪神がリーグ優勝した03年に生まれたことに由来するが、松川はロッテファンだったという。運命の糸で結ばれたチームで今後の活躍が楽しみだ。

写真=BBM
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