週刊ベースボールONLINE

高校野球リポート

理想は甲斐拓也――総合力の高い捕手としてNPBスカウトから注目を集める横浜隼人・前嶋藍

 

1試合2本塁打は初


横浜隼人高の強打捕手・前嶋藍は、神奈川県大会初戦[2回戦、対平塚江南高、4月10日]で2本塁打。高校卒業後のプロ入りを志望している


 重い空気を、1スイングで振り払った。

 横浜隼人高は平塚江南高との県大会2回戦(4月10日)で、1回表に先制点を許した。試合会場は自校グラウンドであっても、大会初戦とは難しいものである。1点を追う1回裏。一死二塁から三番・前嶋藍(3年)は1ボール1ストライクからの3球目、外角ストレートを強振した。鋭い打球は弾丸ライナーで、右中間のネットに突き刺さった。

 逆転2ラン。主将の一発で勢いに乗った横浜隼人高は得点を重ね、4回を終えて9対1とリードした。5回裏一死一塁、前嶋は2ボールからの3球目の真っすぐを左越え2ラン。11対1として10点差、5回コールドを決める2ランで3回戦進出を決めている。

 横浜隼人高・水谷哲也監督によると1試合2本塁打は初。指揮官は、目を細めて言った。

「初戦というのはバタバタ、フワフワ、空回りするもの。(初回の)一振りで、チームの雰囲気を変えてくれました。理想的なキャプテン、けん引役としての姿を示した。良い形で県大会の入りができたと思います」

 内容のある2発だった。高校通算11本塁打とした右スラッガー・前嶋はこう振り返った。

「来たボールを打つのは、得意ではないんです。相手投手の得意な球種、カウント球に定める。そこを仕留めたほうが、バッテリーのダメージも大きい。捕手目線から、相手の考えを読み、頭を使って打席に立っています。第1打席は変化球が2球続いたので、3球はないだろう、と。逆方向に強い打球を打つことを心掛けてきたので、冬場から取り組んできた成果が出たと思います。5回の打席は2ボールだったので、狙っていきました」

 前嶋の見せ場は、打撃だけではない。水谷監督は「止める。捕球。送球。リード。捕手としてのポテンシャルが高い」と認める。二塁送球1.85秒で遠投105メートルの強肩。一塁けん制で矢のようなスローイングをした際には、相手校の保護者からどよめきが起きた。

 NPBスカウトも総合力の高い捕手として注目しており、前嶋も高卒プロ志望を公言する。

「プロ野球で活躍する。日の丸を背負う、球界を代表するような捕手になりたいです」

 好きな捕手はソフトバンク甲斐拓也。理想的の司令塔は「視野を広く、周りを見ながらゲームメークする」。横浜隼人高は2009年夏、激戦区・神奈川を制して甲子園に初出場しているが、前嶋は横浜スタジアムで桐蔭学園高との決勝を観戦している。「小さいころから、水谷監督が指揮する隼人でプレーしたいと思っていました」。自身の進路を実現させるためにも、まずはチームで結果を残す。142人の大所帯を束ねる主将は春の戦いを財産に、夏の一発勝負に照準を定める。

文=岡本朋祐 写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング