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首都大学リポート

アクシデントを乗り越えチームを勢いづける一打。秋春連覇を狙う東海大主将・小松勇輝/首都大学リポート

 

「目標はもちろん優勝」


東海大の主将・小松はケガを乗り越えた今春、グラウンドで躍動している


【4月10日】2回戦
東海大2−1日体大

 首都大学リーグの秋春連覇を狙う東海大で2022年の主将を務めているのが小松勇輝(4年・東海大相模高)だ。

 高校3年春のセンバツでは4強進出。日本航空石川高との準々決勝では先頭打者ホームランを放つなど、主将としてチームをけん引した。東海大では1年時からリーグ戦出場を果たし、3年春からは一番・遊撃手を任されリーグ3位の打率.333をマークした。

 現役時代に遊撃手として活躍した東海大・井尻陽久監督は、自身と比較して「守備は私のほうがうまかったですけど、バッティングは小松のほうが良い。特に抜いた変化球の対応に優れています」と評価している。

 攻守走3拍子そろう小松だが、アクシデントを乗り越え今春、グラウンドに立っている。

 昨春の桜美林大とのリーグ最終戦。後方のフライをキャッチする際に右ヒザを負傷。十字じん帯断裂の大ケガを負ってしまった。手術と2週間の入院を経て、リハビリでは「器具を使って太ももの裏側やヒザを覆う筋肉を強くするためのトレーニングをしていました」と振り返る小松だが、やはり気持ちが落ち込んでしまうこともあったという。

「何より野球ができませんでしたし、トレーニングをしていても力が入らず、これまで上がっていた重量が上げられなくなっていました」。そんな状況のなかで、励みにしていたのはかつてのチームメートの姿だった。

「高校時代の同級生だった森下翔太(中大)や山田拓也(青学大)のプレーを見て、自分を奮い立たせていました」

 ボールを使った練習に復帰するまで、半年の月日が流れていたが、その間にはチームの主将に任命された。井尻監督は「昨年の主将だった門馬大(現:テイ・エステック)をはじめ、上級生だった幹部たちから推薦があったので」と抜擢の理由を語っており、小松は「この冬は正直、足の状態を元に戻すだけで精一杯だったんですが、自分が先頭に立ってやっていればみんな付いてきてくれる」と背中で見せることでチームを引っ張ってきた。

「ケガで半年も野球ができなかったのに、主将にしてくださった監督や先輩方の期待に応えたい」とオープン戦では好調な打撃を見せ、今季の開幕戦には三番・遊撃手で戦列に復帰。筑波大との開幕戦こそ「久々の公式戦で、硬くなった」とノーヒットに終わったが「チームの勝利につながるようなプレーや姿勢を見せていきたい。目標はもちろん優勝です」と力強く宣言していた。

右ヒザの不安は完全に払拭


 リーグ2戦目となった日体大1回戦ではヒットを放ち、続く2回戦では4回裏の第2打席。バットを折りながらもレフト左へ弾き返すと、好走塁で二塁を陥れヘッドスライディングでチームを鼓舞。さらに、次打者のライトフライで俊足を飛ばして三塁へ進むと、犠牲フライで先制のホームを踏んだ。

 同点の7回裏にも二死から四球で出塁すると、すかさず盗塁を決めてチャンスをつくった。「故障はもう、大丈夫です」と右ヒザの不安は完全に払拭されたようである。

 クライマックスは1対1で迎えた9回裏。一死二塁のチャンスで打席に立つと、初球から141キロの高めのストレートを強振。「打った瞬間、外野の頭を越えると思った」という打球は、劇的なレフトオーバーのサヨナラ打となった。前日はライバル・日体大に敗れていたが「負けた後も『野球ができるだけでありがたい』と思って、暗くなることはなかった」と言う小松。絶対に負けられない一戦で有言実行の一打を放ち、勝利をもたらした頼もしい主将の復活はチームにとって、勢いづく1勝となったことは間違いない。

取材・文=大平明 写真=BBM
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