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打撃好調の巨人・吉川尚輝は「首位打者狙える素材」 懸案の一番打者に固定できるか

 

パンチ力も兼ね備える打撃


4月6日の広島戦で8回に逆転の決勝2ランを放った吉川


 打撃センスが凝縮された一打だった。

 巨人吉川尚輝が4月6日の広島戦(マツダ広島)で1点を追いかける8回一死一塁で、中崎翔太の内角に食い込むスライダーを振り抜くと打球は右翼ポール際へ。逆転の1号2ランが決勝アーチとなり、普段は控えめな性格だが右拳を握り、ダイヤモンドを一周した。お立ち台で「CC(メルセデス)がすごくいい投球をしていたので。逆転につながったので本当に良かったです。つなぐ気持ちで打席に入って最高の結果になったので本当に良かった」と安どの表情を浮かべた。

「あのスライダーは非常に難しい球です。ほかの打者だったらファウルか内野ゴロでしょう。吉川はアベレージヒッターですがパンチ力もある。怖いのは故障です。1年間、一番で出場し続ければ、自ずと結果が出ると思います」(スポーツ紙記者)

 開幕15試合を終えて10勝5敗と上々のスタートを切った巨人の中で、「一番・二塁」で15試合中14試合にスタメン出場している吉川の貢献度は大きい。打線の口火を切るリードオフマンが固まらないのが最大の懸案事項だったからだ。昨季活躍して筆頭候補だった松原聖弥は2月の春季キャンプ、オープン戦となかなか状態が上がらず、丸佳浩を一番で起用したことも。球団OBのデーブ大久保氏は週刊ベースボールのコラムで、今年のセ・リーグ順位予想で巨人の優勝を予想した上で、こう分析していた。

「この一、二番に入る打者が1年間固定され、活躍できるような存在となれば、ぶっちぎりで1位です。でも、そのような人材がいないですよね。丸(丸佳浩)が一番に入るようですが、二番が坂本(坂本勇人)だと少し違うかな、と思うんです。二番の役割は大きいのですが、ここに何でもできる打者を置けるかどうかで変化してきます。それと一番打者が初回にヒットで出塁できるかどうか、という部分では、その試合に勢いが出やすいんです。先発投手は、立ち上がりの不安の中マウンドに上がります。その初球をたたかれると不安になりますし、攻撃側は勢いが付く。本当に単純なことですが、それが大事なんです。それだけ一番は大事なポジションなので……ここが決まると巨人は独走すると思います」

いろいろな選択肢がある中で


 新外国人・ポランコの一番起用も予想されるなどいろいろな選択肢の中で、原辰徳監督が白羽の矢を立てたのは巧打と俊足に定評がある吉川だった。

 天才的な野球センスは誰もが認める。だが、度重なる腰痛やケガなどにより、プロ5年間で規定打席に到達したシーズンが一度しかない。昨年も打率3割を超えるハイアベレージで三番を担っていた6月上旬に、左手中指骨折で2カ月間の戦線離脱。試合中のアクシデントなのでやむを得ないかもしれないが、チームにとって大きな痛手だった。8月に復帰以降は大失速したチーム状況の中、吉川も打率を下げて試行錯誤した。108試合出場で打率.272、5本塁打、25打点、7盗塁。出塁率.313という数字も高い能力を持ってすれば、物足りなさが残った。

 二塁の守備力は申し分ない。俊足を生かして守備範囲が広く、球際にも強い。昨季は二塁で99試合出場し、守備率.992はリーグトップ。再三の好守でチームを救った。打撃も「首位打者を狙える素材」と他球団の選手たちから一目置かれるほどだ。27歳とチームを引っ張らなければいけない年齢になった。打って、走って、守って。吉川の全盛期はこれからだ。

写真=BBM
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