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高校野球リポート

神奈川大会で3回戦と異なる風景。球場で華やかなチアリーダーのダンス

 

なぜ、有観客にできないのか


春季神奈川県大会4回戦[4月17日]は無観客試合だが、3回戦までの野球部員、学校関係者、野球部員の保護者のほかに、リーダー、吹奏楽、チアリーダー、一般生徒と、入場の幅が広がった


 高校野球の春季都道府県大会が、各地で開催されている。コロナ禍により中止が相次いだ2年前からは、情勢は大きく変わったが、2019年の平常時とは異なる状況が続いている。感染予防対策下の緊張感ある大会運営。各都道府県の方針があるため、大会開催ガイドラインは主催者(各高野連)によって異なる。

 神奈川県高野連は20年夏の独自大会(甲子園出場をかけた地方大会は中止)以降、慎重を期してきた。20年夏、秋は野球部員のみの入場が認められ、21年春の3回戦までは野球部員、学校関係者、野球部員の保護者・家族に限定され、4回戦以降は上限つきの有観客。同夏も加盟校を集めた開会式は開催せず(メーン会場の保土ヶ谷球場で簡素化)、選手の「安心・安全」を大前提に人数制限を設け開催された。

 感染者数が拡大傾向にあった同秋は再び、無観客開催。実際、出場校から陽性者が確認され、大会辞退校も出てしまった。部員に練習の成果を発揮する場を提供する、そして、大会を成立させることが最優先事項であり、主催者として「無観客」は、苦渋の決断だった。

 なぜ、有観客にできないのか。主催者の高野連サイドも事情を抱えていた。感染予防対策下の大会運営は入場時のシート記入、検温、消毒のほか、参加校へのケアを含めて、業務が多岐にわたる。運営に携わる連盟役員の人員には限りがあり、8会場ほど(春の4回戦は4会場、準々決勝以降は1会場)ある球場に配置するのは、物理的にも難しいという。一般のファンから高野連に問い合わせもあるが、この状況に理解を示してくれているという。

大きな動きがあった22年春


 22年春、大きな動きがあった。4回戦までは条件つきの無観客試合。3回戦までは野球部員、学校関係者、野球部員の保護者・家族に限定も、4回戦は19年秋以来となる「リーダー、吹奏楽、チアリーダー、一般生徒」と、入場できる幅が広がったのである。

 かつて星稜高(石川)を監督として指揮した山下智茂氏は「応援席は、教室である」と語っていた。学校の誇りを胸に、校歌、応援歌と接するのは課外活動として、重要な位置づけであるというのだ。実際、自己犠牲という基本精神の下、チームの勝利のために動く野球から学ぶことは多い。

野球と応援は運命共同体


 現在の3年生は、20年4月の入学組。つまり、野球応援の機会がなかった。神奈川で言えば昨春のセンバツで優勝した東海大相模(アルプス席に入場可も、吹奏楽の生演奏は認められず、事前に準備した音源を流す)と、夏の甲子園に出場した横浜高(吹奏楽はアルプス席で演奏、その他の学校関係者は内野席で応援)の2校だけが、学校応援を経験していた。

 野球と応援は運命共同体。リーダー、吹奏楽、チアリーダー、一般生徒による学校同士の応援合戦は、学生野球の醍醐味と言える。野球部員同様、練習の成果を披露するために努力してきた学生にとっても、活躍の場が提供されるのは喜ばしいことである。

 4月17日。相模原球場では、前日の3回戦とは異なる光景が広がっていた。太鼓に合わせて、華やかなチアリーダーのダンス。明らかに一歩前進した。なお、準々決勝以降は有観客試合で、準決勝と決勝は横浜スタジアムで行われる。春の県大会はもともと、ブラスバンドやチアリーダーを動員する学校は少ない。甲子園をかけた夏の選手権大会に向けては、感染状況を見極めた上で判断されるが、各校とも「夏本番」を信じて待つだけである。

文=岡本朋祐 写真=松田杏子
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