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【MLB】興味深い最速166キロの剛腕ハンター・グリーンが開幕メジャー入りできた理由

 

ケガやトミー・ジョン手術を乗り越え、常時100マイルの真っすぐを身に付けて開幕メジャーを勝ち取ったグリーン。今季どういう活躍を見せてくれるだろうか


 3月26日のジャイアンツ戦、先発したレッズの22歳、ハンター・グリーンが100マイル(約160キロ)超えの真っすぐを次々に披露。195センチ103キロの立派な体格でお尻が大きい。初回一死一塁、三番ダガーに対し、1ボール2ストライクと追い込んだ後101マイルの高め真っすぐで空振り三振。次打者にヒットを許し、二死一、二塁となると、五番カサリには102マイルの真っすぐを続けた。

 2回も一死一、二塁のピンチを迎えたが、真っすぐにスライダーやチェンジアップを織り交ぜ、後続を断っている。2イニング32球を投げ、4安打を許したがすべて単打、無四球無失点だった。それから4日後、レッズはグリーンが開幕メンバーに入り4月10日のブレーブス戦に先発登板すると発表した(5回3失点、メジャー初勝利)。

 グリーンは2017年ドラフト一巡2番目指名の金の卵。当初は二刀流でプレーするプランもあった。ケン・グリフィー・ジュニアが野手としての成功に太鼓判を押し、野手(遊撃手)だけでも一巡10番目までに指名されると言われていたからだ。

 だがプロ入り後1カ月で本人があきらめた。投手の練習だけで忙しく、打撃や守備までやれないと悟ったからだ。投手に専念したものの、2年目の18年7月にヒジを痛め、19年4月にトミー・ジョン手術。長いリハビリ期間を経て、復帰予定の20年は新型コロナでマイナー・リーグのシーズンがキャンセル。21年5月5日、1014日ぶりに2Aで実戦マウンドに立ち、真っすぐ43球のうち37球が100マイル以上と復活を遂げた。

 昨季は2A、3Aで10勝8敗、防御率3.30。106回1/3を投げ、139個の三振を奪った。真っすぐの最速は104マイル(約166キロ)だった。剛腕ひしめくMLBでも、先発投手で真っすぐが100マイルをコンスタントに超える者は少ない。メッツのジェイコブ・デグロム、マーリンズのサンディ・アルカンタラくらいか。

 グリーンはまだ22歳と若いし、体格にも恵まれている。もっともっと球速を上げていきそうだ。野球ファン待望の剛腕投手なのである。本人は「(メジャー昇格を)両親に伝えたときに泣いてしまった。これまでいろんなことがあったし、良かったり悪かったりの繰り返し。人として早く成長しなければならなかった」と振り返る。

 興味深いのはグリーンが開幕メンバーに入れたこと。古い労使協定下なら、球団はトッププロスペクトが調停権やFA権を得るのを遅らせようと、デビューのタイミングをずらすのが普通だった。しかし新協定でルールは変わり、彼のような有望株が開幕からメンバーに入り、新人王のタイトルを獲るか、サイ・ヤング賞投票でトップ3に入れば、球団はエキストラにドラフト指名権をもらえる。

 ニック・クロールGMは「選手が準備できているなら上で投げられるということ。若手をマイナーに置いておくのではなく、チームに勝つチャンスを与えたい」と説明した。レッズは19年ドラフト一巡7番目指名の左腕ニック・ロドロも早めのデビューを考えている。MLBからサービスタイムの操作は消えていくのか。言うまでもなく、レッズファンは大喜びなのだ。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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