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川口和久WEBコラム

田植えを控えて気がついた選手を育てる“土”の力/川口和久WEBコラム

 

たたかれまくった阪神米は秋にどう実る?



 泥まみれ、汗まみれ。

 高校野球の世界では今もそういうところが多いと思う。炎天下、土のグラウンドで練習を積み上げ、鍛え上げる。

 プロも昔はそうだった。土のグラウンドが多く、特にキャンプはみんなユニフォームを泥だらけにしてノックを受けていた。

 少し前になるが、巨人の坂本勇人が甲子園の阪神戦で手痛いエラーをした。

 いくら阪神園芸さんが素晴らしい整備をしても、バウンドが素直な人工芝と土はやはり違う。変化して当然と準備しないとエラーの可能性は増える。

 今、本拠地球場で土の内野は甲子園だけだが、4月13日にはやはり土のグラウンドの松山坊ちゃん球場でヤクルト村上宗隆山田哲人のエラーがあった。

 今の内野手は体が大きくなったが、グラブのハンドリングは意外と器用だ。ただ、昔と比べスマート過ぎるというか、絶対に抜かせない、体に当てても止めるみたいな執念は感じられない。

 これも人工芝メーンが当たり前になったからなと思う。

 土と言えば、マウンドも変わった。ロッテ佐々木朗希のZOZOマリンでのピッチングを見たが、硬くてそれほど掘れてなかった。いまはメジャー流でどんどんマウンドが硬くなっているが、ああなると俺たちが現役時代のように下半身で粘ってというフォームは難しいかもしれない。

 佐々木はその硬いマウンドの反発をうまく使って投げていた。ただ、確かに速い球は投げられるかもしれないけど、上体を使う分、肩、ヒジの負担は大きくなるはずだ。

 前回登板の交代が話題になったが、こうなると100球というのはやはり基準にしたほうがいいのかなと思った。

 何で土を気にしているかと言うと、5月に鳥取で初めての田植えを控えているからなんだ。

 それまでにまず、田んぼの土を2回、掘り起こす、最初は粗く、次は細かくやる。

 これが水を張る前の大切な仕事になる。いい土、いい水が美味しいコメになると聞いた。

 土って人間が手を入れると、どんどん変わっていく。それって、こうやって農業を始めなきゃ分からなかったことだ。

 人工芝は水はけもいいし、管理の手間も少ない。照り返しがあってナイターはきれいだ。興行面ではいいと思う。でも、硬い分、選手の負担を増やすし、ちょっとした変化に弱い選手になってしまう気がする。難しいし、管理が大変とは思うけど、土のグラウンドが選手を育てる面は間違いなくある。

 ただ、ずっと甲子園でやっている阪神は優勝から長く遠ざかり、4年連続リーグ最多失策とホームグラウンドである土の甲子園を克服できなかった。ロベルト・スアレスが欠けただけでガタガタになる、少しひ弱な稲だった。

 今シーズンは最下位で散々たたかれているが、こうやってとことんたたかれることは悪いことばかりじゃない。自分たちの甘えや弱さを突き付けられ、本当に強い稲になるきっかけになるかもしれない。

 早々に優勝は厳しくなったが、今はCSもあるし、選手は今年が最後じゃない。踏まれまくった“阪神米”がどう実るのか。まあ、俺としては、自分の田んぼのほうが心配だけど(笑)。

写真=BBM
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