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村上宗隆の優れているポイントは?「逆方向に飛ばせることが最大の魅力」/元ソフトバンク・柴原洋に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は打撃編。回答者は現役時代に巧打の選手として活躍した、元ソフトバンク柴原洋氏だ。

Q.2021年のリーグMVPを獲得したヤクルトの村上宗隆選手は、巨人の岡本和真選手と本塁打、打点の2冠を最後まで争い、最終的に39本塁打で本塁打のタイトルを岡本選手と同時に獲得しました。まだ高卒4年目(今年5年目)の21歳の段階で、通算100号も達成。どのような点が優れているのでしょうか。打撃の特徴を教えてください。(熊本県・27歳)


今季もヤクルトの四番としてチームをけん引する村上


A.前にさばいてよし、引きつけても長打が打てます

 逆方向に飛ばせることが魅力だと思います。これは巨人岡本和真選手にも共通して言えることだと思いますが、合わせただけでも逆方向にスタンドインさせることが可能です。神宮球場、東京ドームと、今のプロ野球では決して広くはない部類の球場を本拠地としている球団の所属とはいえ、それでも、逆方向にホームランを打つのは簡単なことではありません。逆方向に打つにはその分、ポイントを近くすることが求められますが、村上選手はこれを苦にしません。もちろん、前でさばいても、引っ張ってもOKなバッターで、つまりミートポイント、ヒッティングゾーンの奥行きの長さ(もちろん、単純に広いエリアで苦手コースが少ないこともあると思います)が、長いことを意味しています。

 ヒッティングゾーンが長いと、ボールの見極めの良さにもつながります。四球数は2020年が87個、21年が何と106個で、いずれもリーグ最多。昨季は打率が.278と20年の.307から少し落としてしまいましたが、この四球数の多さが2年連続の出塁率4割超え(20年=.427※タイトル獲得、21年=.408)に表れています。

 あの体を見れば、頑強さは語るに及びませんが、ポイントを近くしても打てるのはリスト(手首)の強さが影響していて、そこから押し出す背中側の筋力の強さも無視することはできません。

 そして、何よりタイミングの良さでしょう。技術があっても、タイミングが合わないと結果にもつながりづらいのですが(といっても仮に差し込まれてしまっても押し込む力もあるのですが)、村上選手はしっかりとボールをつかまえることができています。

 昨季は大学でいえば、4年生。それでこの実力ですから末恐ろしいのですが、これからアベレージをもっと上げていくには落ちるボールへの対応でしょうか。見ていると簡単に、あっさりと空振りするケースが見受けられます。割り切って振っているようにも見えるのですが、このボールをいかに我慢することができるか。あれだけポイントを近くして対応できるのですから、意識的に、または反応して我慢することができれば、さらに四球も増えますし、アベレージも上がってきます。打点、本塁打はこの成績。アベレージも上がれば、令和初の三冠王の期待もできるのではないでしょうか。

●柴原洋(しばはら・ひろし)
1974年5月23日生まれ。福岡県出身。北九州高から九州共立大を経て97年ドラフト3位でダイエー(現ソフトバンク)入団。11年現役引退。現役生活15年の通算成績は1452試合出場、打率.282、54本塁打、463打点、85盗塁。

『週刊ベースボール』2022年3月7日号(2月23日発売)より

写真=BBM
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