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2度の育成契約から大ブレーク 巨人の救援陣に不可欠な「ドラ1右腕」は

 

背水の陣で迎えた5年目


勝ちパターンの一角として奮闘している鍬原


 巨人の救援陣を「ドラ1コンビ」が支えている。守護神に定着した新人右腕・大勢につなぐセットアッパーとして、好投を続けているのがプロ5年目の鍬原拓也だ。

 ドラフト1位で指名されても活躍できずに、球界を去る選手は少なくない。中大で「東都のドクターK」と形容された鍬原もプロ入り後は、苦しんだ時期が長く続いた。1年目の2018年にプロ初勝利を挙げたが6試合の登板に終わり、2年目は15試合登板で防御率4.74と安定感を欠いた。同年の秋季キャンプに原辰徳監督の助言でスリークォーターからサイドスローにフォームを改造。制球力の改善が期待されたが、20年8月に右肘頭の骨折が判明して育成契約に。実戦復帰後は腕の位置をスリークォーターとサイドスローの中間にした。昨年8月に支配下昇格したが一軍登板なしに終わり、オフに2度目の育成契約を結んだ。

 背水の陣で迎えた5年目。鍬原は結果を積み重ねることで信頼を勝ち取った。2月の春季キャンプから紅白戦や二軍戦などを含めて9試合連続無失点と好投を続け、3月11日に支配下へ再昇格。オープン戦6試合登板で防御率1.93と結果を残し、自身初の開幕一軍入りを果たした。

課題の制球難が改善されて


 150キロを超えた直球は球速以上の伸びを感じ、ウイニングショットのシンカー、プロ入り後に習得したカットボールとのコンビネーションで凡打の山を築く。フォームが固まり、右ヒジの不安もなくなったことから思い切り腕を振り、内角を果敢に突く。今季初登板は3月26日の開幕2戦目・中日戦(東京ドーム)。1点ビハインドの7回を無失点で抑え、逆転勝利を呼び込むと、3月29日のヤクルト戦(神宮)では2点リードの8回二死二、三塁で救援登板し、オスナを外角低めの直球で遊ゴロに仕留めた。

 その後も勝負の分岐点となる登板で抑え続け、9試合連続無失点。課題として指摘されていた制球難も改善され、目下11試合登板で1四球のみだ。さらに7ホールド、防御率0.90と「勝利の方程式」に不可欠な存在になっている。

大先輩のように大ブレークを


サイドスローにフォーム変更して球史に残る大投手となった斎藤


 フォーム改造で球史に名を残した大先輩が斎藤雅樹だ。鍬原と同様にドラフト1位で巨人に入団。当時はオーバースローだったが、当時の藤田元司監督が投球時の腰回転がサイドスロー向きだったと分析してサイドスローにフォームを改造。威力十分の直球とスライダーで覚醒した。89年に11連続完投勝利の日本記録を達成し、最多勝、最優秀防御率、平成初の沢村賞を受賞。90年も8試合連続完投勝利を挙げるなど最多勝、最優秀防御率、最高勝率、最優秀選手とタイトルを総ナメにした。平成で唯一の2年連続20勝をマーク。最多勝5度、最優秀防御率3度、最多奪三振1回、最高勝率3回を受賞し、「平成の大エース」と形容された。

「鍬原は持っている能力自体は高かったが、なかなかうまくかみ合わなかった。腕の位置をいろいろ試行錯誤したが、一軍で活躍するために必要な時間だったのだと思います。一軍でフルシーズン投げた経験がないですが、今の投球を続けていれば大崩れすることはないでしょう」(スポーツ紙記者)

 紆余曲折を経たが、まだ26歳。大ブレークする可能性は十分に秘めている。

写真=BBM
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