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身体能力の高さは球界屈指 「トリプルスリーに最も近い」ムードメーカーは

 

昨年はサイクル安打も達成


すべての部門で高い潜在能力を誇る塩見


 ヤクルトの看板は強力打線だ。山田哲人村上宗隆オスナ、現在は左半月板のクリーニング手術を受けて戦線離脱しているがサンタナと強打者がそろっている。その中で、リードオフマンとして不可欠な存在になりつつあるのが、プロ5年目の塩見泰隆だ。

 社会人野球・JX-ENEOSからドラフト4位でヤクルトに入団したときから、身体能力の高さは一目置かれていた。俊足でパンチ力があり、外野の守備も強肩を誇る。即戦力の触れ込みだったが、順風満帆とはいかなかった。ファームでは成績を残すが、故障や打撃不振で一軍定着できない。本人ももどかしかっただろう。チームも一番打者が固定できないという悩みを抱えていた中、ピースとしてピタリとはまったのが昨年だった。開幕からコンスタントに安打を重ねると、5月下旬にリードオフマンとしてチームを牽引。9月18日の巨人戦(東京ドーム)では初回に右前打、3回に右越え三塁打、4回は右越え3ラン、6回の左翼線二塁打を放ち、史上71人目サイクルヒットを達成した。

 140試合出場で打率.278、14本塁打、59打点、21盗塁。ベストナインを獲得するなど自己最高の数字で20年ぶりの日本一に大きく貢献した。ナインにいじられるムードメーカーとしても、その存在がチームを明るくする。リーグ優勝した2015年にヤクルトの監督を務めた野球解説者の真中満氏も塩見の働きぶりを高く評価している。

 週刊ベースボールのインタビューで、「もっとも大きかったのが『一番・塩見泰隆』の定着です。開幕時には六番、そのあとは五番も任されていましたが、オスナ、サンタナが加わったことで一番に起用されます。本塁打も打てるし、盗塁もできる。本当に貴重な戦力になりました。もともと能力の高い選手であることは分かっていましたが、故障がちで乗り切れなかった。でも今季は、持っている能力を存分に発揮できたと思います。チームが勝つことで、自分自身でも乗っていくことができたのでしょう。史上71人目となるサイクルヒットも達成しましたし、まさにブレークしたシーズン。リーグトップの得点力は、彼の飛躍なくして実現はしなかったでしょう」と分析している。

長打力と俊足を兼ね備えた選手は稀少


 飛躍のシーズンになったが、まだまだ伸びしろがある。三振数はリーグ2位の156。好不調の波が激しく、9月下旬まで打率3割をキープしていたが、10月は32打席無安打と苦しんだ。本人も自覚している。昨年9月に週刊ベースボールのインタビューで、「阪神の佐藤(輝明=149三振)選手の次に多いんですよね。で、次が村上(宗隆=92三振)。だからこそ、20本以上ホームランを打っている2人の間に、僕がいるのは疑問符がつきます。さすがに多過ぎると思います。自覚もありますし、対策を練ってもいるんですけど……。それでも減らないのは、自分が至らないからです。技術も、メンタルも、すべてが足りない」と語っている。

 塩見が追い求めるスタイルは明確だ。
 
「理想は、出塁率を残せて、ホームランが打てて、盗塁もできる選手ですよね。これは一番打者に限らず理想のバッターの姿なので、そういう打者を目指していきたいです。そうなるのが目標というか、野球を仕事としてやっている以上、何でもできるというのは強みになっていくと思いますし、数字を残せるのは、打者として価値あること、評価される部分だと思うんです。なので一番打者でなくても、打率も出塁率もある。打点も稼げる、ホームランも打てる、盗塁もできる。そんな万能な打者でありたいと思います」

 長打力と俊足を兼ね備えた選手は稀少だ。塩見は打率3割、30本塁打、30盗塁の「トリプルスリー」を達成する資質を持った最有力候補と言えるだろう。今年は一番だけでなく、チーム事情で四番・村上の後を打つ五番を託される機会が増えている。どの打順でも役割を全うする姿勢は変わらない。プレーの精度を高め、さらなる進化を目指す。

写真=BBM
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