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【MLB】5試合で18出塁、クワンの偉業はコンタクトヒッターの再評価につながるか

 

今季ア・リーグ新人王候補のダークホース的存在と言われているクワン。中国系で小さい体ながら、巧みなバットコントロールで二番としての役割を果たしている


 ガーディアンズのルーキー、スティーブン・クワン外野手が、歴史的偉業を成し遂げた。メジャー・デビューから5試合連続3度以上出塁は史上初、5試合で18出塁も記録の残る1901年以降では最多。その時点で打率.667、出塁率.750はMLB1位。10安打は2位。7得点は2位タイ、7四球は3位タイだった。

 クワンはコンタクトヒッターである。平均打球速度82.4マイルはかなり下のほう。打球速度が95マイルを越えることは少なく、ハードヒット率もバレル率も低い。近年、MLBはパワー重視で、こういったタイプの打者は非力なコンタクトヒッターとして評価は低くなっていた。しかしながらガーディアンズはチーム方針として、コンタクトヒッターの価値を再評価中で、クワンを「二番」に置いた。

 結果、打線がつながり6試合を終えて45得点とリーグ1位。もちろんサンプルとしては小さ過ぎるのだが、クワンとガーディアンズがコンタクトヒッターへの認識を変え、MLBに新たなトレンドを生み出せるかどうかは注目すべきだと思う。

 印象的なシーンが2つあった。一つ目は4月11日のロイヤルズ戦、8回1点リード。非力なクワンに対し、外野3人が左寄り(レフト側)に浅く守っていたのだが、真ん中カーブを引っ張りライト線に打球が転々。「投げた球が甘かったが、守備のいないところに打っている。この子は特別」と地元解説者が絶賛した。走者一掃の三塁打で10対7の勝利に貢献している。

 翌12日のレッズ戦では、9回同点二、三塁のチャンス。ファウルで粘って8球投げさせ、四球を選び満塁に。三番ホセ・ラミレスの満塁本塁打につなげている。クワンはカリフォルニア州出身の24歳。オレゴン州立大でプレーした後、2018年のドラフト5巡でプロ入りした。昨年11月に40人枠に入り、オープン戦の活躍で開幕ロースター入りを果たした。左投げ左打ちで、175センチ77キロと体は小さく、始動で右足を高く上げるのだが、そこから確実にバットにボールを当てられる。

 昨季終盤9月26日に3Aコロンバスで三振を喫して以来、3A、今春のオープン戦、メジャーと72打席連続で三振がなかった。空振りも滅多になく、今季初空振りは開幕から40度目のスイングだった。地元TVのインタビューに「子どものころは三振したら泣いていた。泣きたくないから、三振しないように努力した。三振しても構わないという打者がいるけど、彼らにはパワーがあって、本塁打を打てる。自分はそれができないから、ほかの方法でチームに貢献する。バットに当てて、守備との戦いになる。足を上げても、頭の位置は固定しているから、良い体勢でボールにアタックできている。今はよくボールが見られている」と説明していた。

 ガーディアンズは一番からマイルズ・ストロー、クワン、ラミレスとバットにボールを当てるのがうまく、ボール球を振らない打者が続く。彼らがけん引車となり、13日時点でチーム打率、得点、出塁率、ヒット数、OPSでリーグ1位になっていた。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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