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プロ野球回顧録

野村克也「栄光の記録」《02》打撃主要部門は歴代2位だが四番出場2255試合はトップ【プロ野球回顧録】

 

選手として、監督として、幾多の大記録をつくってきた野村克也。その栄光の記録を振り返っていく。

考えられないタフネスぶり


捕手ながら素晴らしい打撃成績を残した[後列左は皆川睦男、右は杉浦忠]


 プレーイングマネジャーとなった70年10月18日、川上哲治山内一弘榎本喜八に次ぎ4人目の通算2000安打を達成。3年後の73年8月3日に川上の記録を抜く2352安打を放ち歴代トップに立った。しかし5年後の78年、その座を張本勲(巨人)に譲った。

 66年7月23日に史上5人目の通算1000打点を達成すると、70年6月2日には、川上の記録を超える1322打点をマーク。これも南海からロッテに移った78年、王貞治によって更新された。

 試合数、安打、本塁打、打点。これは主力打者にとっては大事なカテゴリーではあるが、野村は現在4部門ともに2位で、過去にはすべてトップに立ったことがある。試合数は186、安打は115、本塁打は90、打点は310と3位につけた差は大きく、これだけでもプロ野球史上稀に見る大打者だったことがうかがえる。

 これだけ2位が多いと「ぼやき」が聞こえてきそうだが、素晴らしい1位がある。それは四番での出場数で、通算2255試合が「四番・野村」だった。スタメン出場が2861試合だから、スタメンの約79パーセントが四番。2位の落合博満が1734試合でその差は500強とダントツ。「ON」は三、四番を入れ替えることが多く、長嶋が1460(7位)、王が1231(13位)と意外に少ない。

「生涯一捕手」が代名詞の野村だが、捕手としての出場は2921試合。これも長年1位の記録だったが、谷繁に42試合抜かれ現在は2位の記録だ。しかし野村がすごいのは全試合出場が6年あることだろう。これは捕手としては最多で2年連続が2度あるのも野村だけだ。初めての全試合は4年目の57年で132試合すべてに捕手としてスタメン出場した。62〜63年は2年連続で、63年は150試合にフルイニング出場という考えられないようなタフネスぶりを見せた。「優勝チームには名捕手あり」という考えだったが、ヤクルト監督時代の愛弟子・古田敦也が全試合に出場した4年はすべてリーグ優勝している。

 またプレーイングマネジャーとなった70年も130試合すべてにスタメン出場を果たしている。野村は南海時代に8年間プレーイングマネジャーで、1038試合に指揮を執ったが、約94パーセントの973試合に出場し、そのほとんどがスタメンだった。野村を超える1083試合の中西太(西鉄)の試合出場は約28パーセント。半分以上に出場したのは白石勝巳(広島)、藤村富美男(阪神)、山本一人(南海)の3人しかいない。監督、捕手、中心打者の3役をこなし続けたことは特筆ものだ。

監督としては貯金2


ヤクルトでは監督としてリーグ優勝4度、日本一3度に輝いた


 南海時代の監督8年間の成績は512勝471敗55分け、勝率.521と好成績だった。優勝は73年の1度(前期優勝し、プレーオフで阪急を破り優勝)に終わったが、Bクラスは2度(71年=4位、75年=5位)。常に上位を狙える状況だったが、野村が退団した78年から11年連続Bクラス(最下位5度)と南海は低迷し球団をダイエーに譲渡し、かつてのライバルだったライオンズのいた九州へ移った。

 89年オフ、ヤクルトの監督要請を受け、若手が多いチームを常勝チームへと導いた。ヤクルトは9年間采配し、リーグ優勝4度、日本一3度をマークし名将と呼ばれた。ヤクルトでは628勝552敗7分け、勝率.532の成績だった。99年からは阪神の監督を3年間、2006年には球団創立2年目の楽天の指揮を執った。阪神時代は3年連続最下位、楽天時代も3年目の08年までBクラスで監督の通算成績も勝率5割を割ったが、09年は楽天球団史上初の5割超え(77勝66敗1分け=2位)で初のクライマックスシリーズ進出を果たし、自身も通算1565勝1563敗76分けと辛うじて5割をキープした。

 南海時代を含め監督24年間で3204試合の指揮を執った。選手、監督でともに3000試合を超えたのは唯一。1565勝は歴代5位の記録だが、4位以上はすべて「昭和時代」のもので、平成時代の1053勝は平成でのトップとなる。

 主力選手として監督として偉大なる成績を残した「野村克也」の名は日本プロ野球の中で長く語り継がれるだろう。

文=永山智浩 写真=BBM

2020年週刊ベースボール3月31日号増刊『野村克也 追悼号』より
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