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中日・大野雄大が10回二死まで完全投球。「吉見一起の魂」を受け継いで進む野球道

 

まさに大黒柱のピッチング


5月6日の阪神戦で10回二死までパーフェクトの快投を見せた大野雄


「僕の記録なんてどうでもいい。最後に(石川)昂弥が打ってくれて、すべてが報われた。ホンマに勝って良かった」と笑顔を浮かべた。

 5月6日の阪神戦(バンテリン)。先発した中日大野雄大は力強いボールを投げ込み、阪神打線を封じ込む。9回までパーフェクトピッチング。しかし、味方の援護がなく0対0のまま延長戦へ突入した。一度は降板予定も、「やっぱりいかせてください」と立浪和義監督に志願。10回のマウンドに上がりって二死までこぎつけたが、30人目の打者だった。佐藤輝明に二塁打を浴び、完全試合の夢は消え去ってしまった。だが、気持ちは折れない。続く大山悠輔を二飛に打ち取り、ピンチを切り抜ける。するとその裏、石川昂弥のサヨナラ打が飛び出し、中日は1対0で勝利。大野雄は今季2勝目を手にした。

 まさに大黒柱のピッチング。2011年、ドラフト1位で入団した大野雄がエースになっていく過程で無視することのできない存在が吉見一起だ。08年から5年連続2ケタ勝利を挙げるなど黄金期を支えた右腕。昨年出版された『中日ドラゴンズ85年史』で「影響を受けた選手は誰ですか」と問われた大野雄は次のように答えている。

岩瀬仁紀さんにもすごく勉強させてもらいましたが、同じ先発というポジションもあり、吉見さんです。1年目のオフに自主トレに連れて行ってもらってから、一番吉見さんを見てきましたし、吉見さんから学ぼうと思ってずっとやってきました。チェン(チェン・ウェイン=現阪神)がメジャーに移籍してからは、チェンの穴を僕が埋めて、『吉見−大野』の二枚看板でドラゴンズを優勝させたいと。吉見さんは12年の最後のほうにケガをしてしまい、その後、あまり投げることができなくなってしまうんですが、自分が勝てなくてしんどいときに『あの人だったらどうするか?』と考えながら練習に取り組んでいましたし、夏場のしんどいランニングも『あの人なら手を抜かないだろうな』と思って、乗り切ったこともあります」

サヨナラ打と放った石川昂[左]とともにお立ち台に上がった


 20年限りで吉見はユニフォームを脱いだ。その引退に際し、大野雄は「魂を受け継ぐ」と口にしていた。

「僕は13年から3年連続で2ケタ勝っているんですけど、その間の貯金は3個だけなんです。キャリアトータルでは69勝67敗で2個だけ(※20年終了時点)。じゃあ、吉見さんはどうか。トータルでは90勝56敗で34個の貯金。2ケタ勝利は5度あるんですが、全部貯金をしています。吉見さんは成績でも、姿勢でもチームを引っ張った。言葉でもしっかりと発言する人で、僕もそうでないといけないと。すごく影響を受けています」

 大野雄が入団した11年以降、優勝から遠ざかる中日。悲願の優勝へ向け、背番号22がかつてのエースを姿を追い求めながら腕を振る。

写真=栗山尚久
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