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荒木大輔WEBコラム

“つなぎ”の意識で負けない野球が首位ヤクルトの真骨頂。巨人は引きずらないことが重要/荒木大輔WEBコラム

 

巨人に3連勝で首位堅持


ここまで10試合に投げて防御率0.00と好リリーフを続ける木澤。5月8日の巨人戦ではプロ初勝利もマーク


 5月8日の巨人戦(東京ドーム)でヤクルトが4対3で鮮やかな逆転勝ちを収め、巨人に3連勝を果たした。2位・広島に1ゲーム差で首位を堅持しているが、ヤクルトの強さの要因には“つなぎ”の意識が徹底していることにあると思う。8日の試合でもそれが随所に表れていた。例えば9回の攻撃だ。ヤクルトの1点ビハインドで巨人のマウンドには大勢が上がった。ここまで負けなしでリーグトップの12セーブを挙げているルーキーだ。難攻不落の強敵であることは間違いない。

 ヤクルトは先頭の代打・川端慎吾が投ゴロに倒れたが、続く代打の中村悠平が左翼へ二塁打。一番に戻って塩見泰隆が遊撃へしぶとく内野安打を放ち、一死一、二塁。このチャンスに打席に入った山崎晃大朗は初球の直球をとらえ、センターへ決勝の逆転二塁打を放った。山崎はヒーローインタビューで「中村さんも、塩見もすごく粘って塁に出たので、何とか僕も後ろにつなぐことだけを意識して真っすぐ一本に絞って打ちました」とコメントしていたが、150キロ超のストレートを連発する大勢に対して「振り負けないように」と力強いスイングで立ち向かっていては決して打ち崩すことはできなかっただろう。「なんとか食らいつこう」というスイングをされたほうが、投手はイヤな感じをマウンドで受けるものである。

“つなぎ”の意識は投手陣にもある。先発のサイスニードは6回にウォーカーに勝ち越し2ランを浴び、さらに無死一、二塁とピンチを招いて降板したが、代わったコールが後続を断って追加点を与えない。7回は梅野雄吾がゼロに抑え、さらに8回の木澤尚文だ。わずか3球で三者凡退。1年目の昨年はボールが暴れる印象があったが、しっかりゾーンで勝負できるようになっている。特にこの日も5球投じた150キロ超のシュートの威力が素晴らしい。あれだけの速さで少し変化するのだから、打者にとっては相当厄介だろう。9回はマクガフがきっちりと締めてヤクルトが勝利したが、投手陣もマウンド上で与えられた役割を確実に果たして、次に“つなぐ”ことだけを考えているように見える。

 四番の村上宗隆は無安打だったが、2四球を選んでいる。投打に徹底されている“つなぎ”の意識。圧倒的に勝つ野球ではなく、負けない野球がヤクルト野球の真骨頂だろう。それが貫かれている限り、大崩れはしないと思う。

首脳陣の前向きなコメント


5月8日のヤクルト戦で9回に逆転を許した大勢


 一方、4連敗となった巨人。吉川尚輝坂本勇人をケガで欠き、さらに菅野智之も二軍だ。苦しい戦いが続くが、引きずらないことが重要になる。初めて大勢で負けてしまったが、開幕から不動の守護神として勝利に貢献してきた右腕だ。今年の勝ちパターンで勝負して負けてしまったのは仕方がない。それは首脳陣も分かっているのだろう。大勢に対して原辰徳監督は「いろいろな意味で勉強よ」、桑田真澄投手チーフコーチは「この1敗を彼は何勝にも変えてくれる」とポジティブな言葉を残している。今は耐える時期だが、ヤクルトのように選手個々が自らの役割に徹して苦境を脱していくしかないだろう。

写真=高塩隆
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