読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回はバント編。回答者は歴代2位の451犠打を誇る元西武ほかの平野謙氏だ。

Q.昨季のクライマックスシリーズのファイナルステージで、オリックスがバスターを成功させ、日本シリーズ進出を決めました。成功のコツなどはあるのでしょうか。（山口県・匿名希望・16歳）

A.センターラインだけ避ければ、成功の確率は高い

　バントの構えをし、相手に送りバントと思わせ、ヒッティングに切り替えるのがバスターです。サインは3つほどあり、まずは普通のバスター。これは相手の内野手がバントと判断し、チャージを掛けてきた場合はヒッティング、掛けてこなかったら見送ります。2つめは基本バントのバスター。これはバントのサインなのですが、内野手が前に出てきたら選手の判断でヒッティングに切り替えていいというものです。そして最後はバスターエンドラン。このサインの場合、走者が走っていますので、どんな球でも当て、最悪でも進塁打になるようにします。

　バットの握りとしてはバントのときよりバスターのほうが長く持っている選手もいますが、これでは観察力のあるバッテリーなら見抜かれてしまいます。バントもバスターも同じように握ってください。そこからグリップ側の手をヘッド側の手に近づけるように引き、トップは浅くて構いません。そもそもバスターは強く振る必要はありません。ゴロを転がせばいいので、振るというより当てる意識でコンパクトに振るのがコツです。

　打球は浮くと併殺の可能性が高くなるのでゴロがベストですが、簡単ではありません。昔は「たたきつけろ」と言われましたが、ダウンスイングはボールを一カ所でしかとらえられず、しかもボールの下に入ってスピンがかかってしまい小フライになることがよくあります。スイング自体はレベルで、ボールの真ん中ならライナー、下ならフライ、上ならゴロになります。バットの芯より少し下で打つイメージがいいですね。ただ、頭で描いたとおりにいかないがバッティング。練習で繰り返し、ゴロを打つ感覚をつかんでください。


　打つコースに関しては、もちろん、内野のシフト、動きをよく観察することが重要です。例えば、走者二塁でファーストがチャージするとセカンドが一塁カバーに入り、セカンドが空きます。そのあたりに転がせばボテボテでも十分ヒットになります。ただ、ショートはセカンドに入るので三遊間も空いているはずですから、センターラインだけ避ければ成功の確率は高いものでもあります。

　バスターは相手の隙を突いてのものなので、ヒッティングの構えからバントのフェイクを入れ、そこから引いてバスターというのもあり得なくはありませんが、あわただしいし、成功の確率は低いでしょう。バントの構えからのほうが成功の確率も高いと思います。


●平野謙(ひらの・けん)
1955年6月20日生まれ。愛知県出身。犬山高から名商大を経て78年ドラフト外で中日入団。88年に西武、94年にロッテに移籍し、96年現役引退。現役生活19年の通算成績は1683試合出場、打率.273、53本塁打、479打点、230盗塁。

『週刊ベースボール』2022年4月11日号(3月30日発売)より

写真＝BBM