週刊ベースボールONLINE

HOT TOPIC

プロ15年目で初犠打の後に2試合連続弾…巨人・中田翔は逆襲の「キーマン」になれるか

 

不振で二軍落ちも経験


5月14日の中日戦で逆転満塁アーチを放った中田


 この男が打つと巨人が勢いづく。5月14日の中日戦(東京ドーム)。5点差を追いかける苦しい展開だったが6回以降に点差を縮めていくと、7回一死満塁で中田翔祖父江大輔のスライダーを左翼席に運ぶ4号逆転満塁アーチ。巨人に移籍後初の2試合連続弾が決勝打となり、お立ち台で「ホッとしていますし、ファンの声援のおかげだと思っています。興奮していたので(手応えを)覚えていないですけど、すごく気持ちよかったです」と安堵の表情を浮かべた。

 13日の中日戦(同)では見慣れない光景に球場がどよめいた。同点の4回無死一、二塁で打席に入った中田がバントの構えをする。大野雄大の初球はファウルになったが、2球目をきっちり転がして走者を進めた。日本ハムに入団して昨季途中に巨人に移籍したが、プロ15年目の通算1521試合目、6245打席目で初犠打を記録。初犠打までに6000打席以上要したのは、1973年の張本勲(日拓)以来2人目だった。

「驚きはあったかもしれませんが、勝利のために主力が犠打をすることは決して珍しくありません。丸佳浩阿部慎之助(現巨人作戦兼ディフェンスチーフコーチ)もやりましたし、リーグ優勝決定戦となった94年10月8日の中日戦(ナゴヤ)でも松井秀喜(現ヤンキースGM特別アドバイザー)が同点の3回無死二塁で三塁前に転がす犠打を決めています。ゴールデンウィーク以降2勝9敗と失速していた巨人はチームを立て直すために勝ち続けなければいけない。好投手・大野から多くのチャンスをつくるのは厳しい状況で、ベンチが中田にバントを命じたのは当然考え得る策です」(スポーツ紙記者)

 プロに入って初めて出された犠打のサイン。無死一、二塁で相手の警戒度も高い中、成功させるのは決して容易ではない。きっちり決めた中田の仕事ぶりは評価されるべきだろう。続く大城卓三の内野ゴロの間に勝ち越した。その後にいったんは同点に追いつかれたが、7回にボランコの左前適時打で再び勝ち越し、8回に中田のバットが大きな追加点をもたらした。無死一塁で山本拓実の148キロ直球を豪快に振り抜き、3号左中間2ラン。打った瞬間に本塁打と分かる一発に雄叫びをあげた。

 昨オフは下半身強化に励み、ウエートトレーニングでベストに近い110キロ前後まで20キロ増量。オープン戦で打率.325、3本塁打、8打点と仕上がりの良さをアピールし。「五番・一塁」で開幕スタメンを勝ち取ったが、打率1割台と状態が上がらず首痛で4月22日に登録抹消。今月10日に一軍に再昇格した。チームの勝利のために貢献したい思いは誰よりも強いだろう。価値ある2試合連続アーチが復調の兆しになるか。

巨人の先輩たちも味わった試練


巨人にFA移籍してきた村田も何度も挫折を味わいながら巨人で勝利に貢献した


 長距離砲の先輩たちも巨人で試練を味わってきた。村田修一(現巨人打撃兼内野守備コーチ)は横浜(現DeNA)で2年連続本塁打王を獲得するなど主砲として活躍し、11年オフに優勝争いできる環境でのプレーを望み、巨人にFA移籍。逆境から何度もはい上がった。移籍1年目の12年は全試合出場したが、打率.252、シーズン最少の12本塁打とプロ入り以来最低の数字に。だが、翌13年は打率.316、25本塁打とリーグ連覇に貢献。15年は度重なる故障の影響で規定打席に届かず、打率.236、12本塁打と不本意な成績だったが、翌16年に「本塁打を捨てる」とプライドをかなぐり捨て全試合出場で打率.302、25本塁打と結果を残した。

 中田もこの壁を乗り越えて活躍することで、野球人として一回り大きくなれる。不動の四番・岡本和真のあとを打つ打者として中田が控えると、相手バッテリーに威圧感を与えられる。今後の逆襲に向けて、キーマンになりそうだ。

写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング