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【MLB】次の3000安打達成者はしばらく出ない理由から考察する野球の変化

 

メジャー7人目となる3000安打と500本塁打を達成したカブレラ。今後、このような3000安打を打てる打者は……MLBの野球が変化してきており、厳しくなってきている


 先月、タイガースのミゲル・カブレラがメジャー通算3000安打を達成し、3000安打と500本塁打の両方を成し遂げるのは史上7人目、エリートクラブの仲間入りと報じられた。

 メンバーはウィリー・メイズ、ハンク・アーロン、エディ・マレー、ラファエル・パルメーロ、アレックス・ロドリゲス、アルバート・プホルス、カブレラの7人である。おやっと思ったのは「エリート/選ばれし人々」にベーブ・ルース、バリー・ボンズ、テッド・ウィリアムスが入っていないことだった。

 四球で勝負を避けられたため安打数が3000に届かない。史上四球が一番多いのはボンズで2558個、ルースは2062個で3位、ウィリアムスは2021個で4位。エリートクラブの7人で四球ランキングに一番先に顔を出すのはメイズで22位だった。四球の数で見ると、22位まで出てこないエリートクラブとは何なのかと考えてしまった。この7人が特別であることは確かだが、最強とは限らない。

 数字は鵜(う)呑みにするのでなく、意味を考えないといけないとあらためて感じた。3000安打に関して見ると、これまで33人が到達。メジャー・デビューの年次で分けると、19世紀末が3人、20世紀は00年代が3人、10年代が0人、20年代が1人、30年代が0人、40年代が1人、50年代が4人、60年代が4人、70年代が6人、80年代が5人、90年代が3人、そして21世紀は3人だ。

 50年代以降はコンスタントに達成者が出ていたのが分かるが、03年デビューのカブレラを最後に、実は今後しばらくは次が出てきそうにない。今現在、2000本台の現役選手は3人。最多はロビンソン・カノで2632本だが、先日メッツを戦力外になり、39歳で力の衰えが目立つ。

 2131本のヤディエル・モリーナも2036本のジョーイ・ボットも40歳代間近で不可能だ。過去に3000安打を達成した打者は、平均32.2歳で2000本を通過したが、今そのような好ペースの打者はいない。アストロズのホセ・アルテゥーベは32歳で1798本。14年から17年に4年連続で200安打を達成したが、20年は新型コロナの短縮シーズンで42本、今季はケガもありまだ21本である。

 エンゼルスのマイク・トラウトは1453本で、今年8月に31歳になる。現役最高の打者だが、四球が多く、シーズン200安打は一度もない。なぜ次が出そうにないのかを考察すると、個々の選手の能力ではなく、近年、野球環境が大きく変わったからだと思う。

 まずは薬物。03年からドーピング検査が始まり、厳しい取り締まりで、迂闊(うかつ)なことはできないし、ヘタをすればカノのように1シーズンの出場停止処分を科されることになる。選手は全試合出場を目指すのではなく、休みを取りながらの状況が普通になってきた。

 打者に対する評価基準も変わり、200安打や打率3割より、長打や出塁率、すなわちOPSが最重要になった。若い選手の中にはフアン・ソトのように特別な才能を持つ打者が少なからずいる。しかしヒット数を最優先する者は多くないと思うのだが。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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