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「親のマネをするのは悔しかったんですけど…」 赤門エースを目指す渡辺俊介氏の長男

 

チーム事情で下手投げに


東大の1年生・渡辺向輝は5月31日、慶大とのフレッシュトーナメントで大学デビューした


 元ロッテのサブマリンとして通算87勝を挙げた渡辺俊介氏(日本製鉄かずさマジック監督)を父に持つ、東大・渡辺向輝(1年・海城高)が5月31日、慶大との東京六大学フレッシュトーナメントで初登板した。

 3番手で救援も2/3回で2失点とほろ苦い結果となった(チームは2対10の7回コールド敗退)。2年生以下でチーム編成される同トーナメントで、渡辺はベンチ登録メンバー25人のうち、1年生6人という狭き門に入った。しかも、初戦でマウンドを踏んだのだから、チーム首脳陣の期待の大きさが見て取れる。

「あんなに強い人と対戦したことがなかったので、良い経験になりました。高校のときは先発。中継ぎとなると、どのタイミングで行くのか……。部員の多いチームの代表として投げるので、今までとは違いました」

 神宮でプレーするのは、城北高との東東京大会2回戦を戦った昨年7月11日以来。先発した渡辺は6回7失点。チームは8対9で無念の初戦敗退を喫している。

 そこで話題となったのが、腕の位置である。高校3年春は下手投げだったが、これにはチーム事情があった。

「同学年には自分しか投手がいなくて、1学年後輩も2人。週末の練習試合のダブルヘッダーも、3人で回していくのですが、1試合目は完投。ゴールデンウイークは試合の連続で、右肩を痛めてしまいました。でも、自分が投げなくてはいけない」

 東東京大会開幕2週間前、渡辺は決断した。マウンドに立つため、オーバースローから右肩に負担のかからないアンダーハンドにしたのだ。幼少時から遊び感覚で取り組んだことがあり、転向にも大きな影響はなかった。

「親のマネをするのか悔しかったんですけど、(映像を)たくさん見ました」

試行錯誤が続くフォーム固め


 実はこんなエピソードもあった。

「中学時代、自分的には(体の動きとして)サイドのほうが合うかな、と思った時期がありました。でも絶対、比較されるな、というのがあって、上からにこだわっていました」

 慶大戦では、サイド気味の腕の位置で投げた。すでに右肩の痛みは完治しているが、フォーム固めに関しては試行錯誤が続いている。

「上のほうが、変化球がよく曲がる。両方を試していく中で、合っているほうにしたい」

熟知する努力するノウハウ


 東大理科二類へは現役合格。

「夏の大会で負けたあとはしばらく引きずって、落ち込んでいました。8月上旬に受けた模試がE判定。これはまずいと思い、1日で起きている時間は勉強をしていました」

 秋口にかけてB判定となり、A判定が出ることも。数学と英語が得意で、超難関入試を突破したのである。渡辺は努力するノウハウを熟知しており、今度は野球に置き換えていく。

「プロが使用している球場で試合ができるのが新鮮で、東大野球部に入って良かったなと思います。先発で長いイニングを投げられる投手になりたい」

 慶大戦は緊張のあまり、変化球が制球できず、甘い真っすぐを狙い打たれた。持ち球はカーブ、スライダー、シンカー。冷静に投げれば、通用する手応えは得たという。受験勉強により、体重はベストから4キロ減の59キロ(167センチ)。夏場は体づくりに重点を置き、秋のリーグ戦デビューを見据える。実戦経験を積み、将来の赤門エースを目指していく。

写真=矢野寿明
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