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ロッテの高卒1年目捕手・松川虎生はどこが一番すごい?【前編】/元中日・中尾孝義に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は捕手編。回答者は現役時代に強肩強打を誇り1982年の中日優勝時にはMVPに輝いた、元中日ほかの中尾孝義氏だ。

Q.ロッテの松川虎生捕手が佐々木朗希投手の完全試合のキャッチャーを務め話題になっています。どこが一番すごいのでしょうか。僕も高校でキャッチャーをしているので参考にすべきことがあれば教えてください。(兵庫県・匿名希望・18歳)


高卒1年目らしからぬ風格がある松川


A.キャッチングがいい。ミットを早く持っていけるのは動体視力がいいからでしょう

 ロッテのドライチ・松川虎生ですね。市和歌山高時代は小園健太(現DeNA)とバッテリーを組み、強肩強打で鳴らした選手です。18歳、しかも高校を出て2カ月しかたっていない選手があれだけ堂々とプレーしている姿を見ると、本当にすごいなと思います。僕の18歳? 大学受験に落ちて浪人生活です(苦笑)。

 開幕スタメンマスクや完全試合のキャッチャー、さらには怖い審判を止めて(笑)と大活躍です。僕もほかから取材を受けたり、知り合いから質問されたりもします。1回では説明しきれないと思うので何回かに分けていきたいと思います。

 一番聞かれるのが、160キロ以上の球をよく捕れますね、ということですが、少し素っ気ない答えをしていいですか? プロに入るような選手なら普通に捕れます!(笑)。160キロは速いですよ。速いんですけど、乱暴に言えば、慣れたら誰でも捕れます。彼の場合、小園も150キロ台の速球投手ですから、高校時代から慣れていたのもあるでしょうね。

 ただ、あのキャッチングはいいですね。捕球位置にミットを早く持っていけています。フォークやスプリットという落ちる球に対しても、下手な選手はボールの軌道を追いかけるようなミットの使い方をし、上からかぶせるみたいに捕るけど、彼は落ち方を予期し、地面ギリギリなら面を上に持っていき、そこにすっと入るキャッチングもしていました。佐々木朗希の球筋が頭に入っていることもありますが、単純に目で見ての反応が早いように思います。動体視力がいいんでしょうね。

中尾氏はキャッチングを高く評価する


 ただ、誰でも捕れますとは言いましたが、160キロ以上の球をしっかりミットを止めて捕るというのは簡単ではありません。腕力、手首の強さは当然あるけど、もう一つ、いかに早くミットを持っていくかです。ギリギリで捕るとミットが動きやすいし、動いているように見られやすいというのもあります。一瞬でも早く構えられるかどうかは重要なことであり、彼のストロングポイントでもあります。

 こういうキャッチングは高校のときからできたのだと思いますが、彼のプロへの適性を見抜き、1位で指名したロッテのスカウトも評価すべきでしょう。担当スカウトも自分が狙った子が1年目からすぐ活躍なんてうれしいでしょうね。

 僕自身もスカウト経験があり、よく「高校生のキャッチャーのどこを見るのですか」と聞かれました。もちろん、肩の強さ、キャッチング、スローイングの技術もありますが、プラス雰囲気もあります。これは言葉では説明しづらく、また実際に現場に行かなければ分からないものがあります。

 苦しんでいますが、バッティングもよくなると思いますよ。今はまだプロのスピードや変化球に遅れてしまっているのだと思いますが、目がついていっているなら、あとは慣れだけですからね。

<「後編」に続く>

●中尾孝義(なかお・たかよし)
1956年2月16日生まれ。兵庫出身。滝川高から専大、プリンスホテルを経て81年ドラフト1位で中日入団。89年に巨人、92年に西武に移籍し、93年現役引退。現役生活13年の通算成績は980試合出場、打率.263、109本塁打、335打点、45盗塁

『週刊ベースボール』2022年5月23日号(5月11日発売)より

写真=BBM
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