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川口和久WEBコラム

「変化球を待って真っすぐも打つ」常識を超えた男、多村仁志/川口和久WEBコラム

 

利き目は両目


ソフトバンク時代の多村


 先日、多村仁志君(元横浜、ソフトバンク、DeNA中日)と東京ドームのレジェンズシートでW解説をしていたとき、セ、パの投手の違いという話になった。

 多村君は2004年の横浜時代に40本塁打を打っているが、ソフトバンクでも10年に打率.324をマークとセ、パで活躍している好打者だ。広角に長打を打つ力と技を持ち、故障さえなければ、打撃タイトルの常連になっていたかもしれない。

 彼はセの投手は追い込むとタテ変化が多いが、パでは真っすぐで力押ししてくるケースもある、という話をしていた。

 その対応を尋ねると、多村君は「僕は変化球を待って、ストレートに対応していました」と答えた。

 そこでびっくり。プロのピッチャーの球は速い。変化球待ちで真っすぐが来たら、ふつうは差し込まれるから、見送るかカットしてくる。だが、多村君は、その待ち方でも真っすぐを逆方向に打てたという。

 これは天才だな、と思った。

 そこから少し打撃の話になったのだが、もう1つ驚いたのが、彼が「利き目は両方です」と言ったことだ。

 現役時代からたくさんのバッターを見てきたが、誰にでも利き目があるといつも感じていた。

 俺は左目だが、高校時代は右打席に入っていたので内角はしっかり見極められたし、うまく腕をたたんでホームランにすることもできた。だけど、プロ2年目、利き手の肩を前(投手寄り)にすると死球の際、危ないと言われ、左打席に立つことにしたが、逆にインコースが苦手になり、外の球がよく見え、楽に打てるようになった。

落合は特に怖いバッターでなかった!?


 投手は打者の利き目が分かれば、それを利用することができる。例えば落合博満さん(元ロッテほか)は、たぶん右目だと思う。捕手側の目が利き目のバッターだから外が得意、内が苦手になるが、落合さんは顔を正面に向けることで内の球のケアをしていた。

 そうは言っても完全ではない。

 広島で言えば、落合さんは北別府学さんの外低めの真っすぐきれいにはじき返したが、サウスポーの俺のクロスファイアやカット系のインサイドは大抵詰まった。大打者に対し失礼かもしれないが、俺にとって落合さんは特に怖いバッターではなかった。

 もちろん、そこそこの球速でインサイドに攻めていればで、球速が落ちると、内も外も関係ない人だったけどね。

 それにしても、変化球待ちで真っすぐを打て、両方が利き目という多村君はすごい。あらためて故障が多かったことを残念に思う。

写真=BBM
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