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プロ野球はみだし録

黄金時代の西武を率いた森祗晶監督。8連敗で「おめでとう」と“祝福”された!?【プロ野球はみだし録】

 

「監督がやりたければどうぞ」


黄金時代の西武を率いた森監督[右は川上哲治]


 勝敗には一喜一憂しがちなもの。勝てば喜びを爆発させるが、敗れると一気に憂鬱となる。あまり一喜一憂しないほうがいいと言われるが、これはこれで健全なことなのだろう。負け続けると、それに慣れてしまうデメリットがあり、一方で、勝ち続けると喜びは徐々に爆発力を失い、飽きるような感覚も生じてくる。

 プロ野球の場合、ナインはメンタルもコントロールしているはずだが、ファンは残酷なほど素直で、黄金時代のチームは人気の低空飛行に苦しむことがあるようだ。巨人も人気が爆発的になったのはV9時代より最下位を経験してからであり、そのV9を司令塔として支えた森昌彦(祇晶)監督の西武も、黄金時代には似た傾向があった。ライオンズが西武となり、初のリーグ優勝、日本一は1982年のことで、このときは広岡達朗監督、森ヘッドコーチという体制。森監督となったのは86年で、リーグ連覇を継続させた上で日本一の座も奪還している。

 89年が森監督となって初のV逸。優勝した近鉄に0.5ゲーム差の3位で、このときは前身の西鉄も合わせて、ライオンズ初の5連覇を逃した形だった。そのオフ、シーズン報告のため訪ねてきた森監督に、堤義明オーナーは「監督がやりたいのであれば、どうぞやってください」と言ったと伝わる。森監督は緻密な野球で黄金時代を盤石のものとしたが、そこに「つまらない」と批判が集まっていたこともあったのだろう。成績が低迷しても別の形で批判されていたはずだが……。

 結果的に翌90年も西武を率いることになった森監督。シーズン中、8連敗をした際、逆に「おめでとう」と“祝福”されたという。森監督に電話で“祝辞”を伝えたのはV9巨人を監督として率いていた川上哲治だった。森監督が「からかわんでくださいよ」と応じたと言うが、「悪い部分を早い時期に出し切れた、という意味だったのではないか」と推察している。もしかすると、常勝を「つまらない」という類の批判はなくなっていく、という意味もあったかもしれない。最終的に西武はリーグ優勝、日本一にも。そのままリーグ5連覇を達成している。

文=犬企画マンホール 写真=BBM
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